マルー・クインクエ【七つの試験】・・・5

バチャバチャバチャバチャ
(もらった――)

先頭を独泳していたアカティラ スビダは、数メートル先の旗を目前に勝利と言う二文字を確信した

スイ~~~

「え?」
水面ギリギリに進む謎の人影がアカティラ嬢を抜いていく

ジャッパーン ボチャン

大きく水面ジャンプし着水
〈きれー〉
〈すごーい〉
後を追う女子も美しい水の芸術に感嘆の声を漏らす

ガシ

そしてそのまま人影は旗を掴んだ
「とった――」
旗を取り岩場に悠然と立つ人影は典型派ひらい るいこだ

スス~~~ ザバッ

アカティラ嬢の横を又滑る様に泳ぐ影
「ひらいさん流石ですね、追いかけるのがやっとでした。ね、パグちゃん」
『キャン』 ブルブル
二位のるうりんは、疲れた様子も無くるいこの健闘を称える。
パグは体に付いた水滴を振り落としていたが、どうやら一緒に泳いで来たらしい
「こんなもんだろう」
いつの間にかたさいが三位
「るいこべしか!」 ザバッ
「あい」
のの子が四位だ
「……」
次にアカティラ嬢が岩場に上がる
「完敗ね」
溜息しアカティラ嬢は去って行った。
続々と典型派が上位入りし、最後尾にいたイソネもやって来る。
コンビ派みちとあやは格好良く岩場にジャンプし歓声を集めて大賑わい。
他セレブ達は十位から二十位の間に収まる事となった

「るうりんちゃん! 何という艶やかさ!! 水に濡れ眩い姿はまさにマーメイド!!」
上から見てる一丁は楽しくて大はしゃぎ


「甲羅干しですうの」
「お嬢様、トロピカルドリンクです」
その頃のまりもは板状のビーチボードに乗り、上にパラソルを掲げ寛いでいた


「団長殿、持ち場を離れて良いですと?」
「心配せんとも棄権者以外通過したのを確認してから来た故。間に合って良かったわ! いざないも来れば良かったのにのぉ」
呆れるどしやと無反応のまいち。この試験は一丁にとって素晴らしい時間だった

         * 

救助を待つれいり達はお互い距離を取って座り、波が打ち付ける音だけが聞こえてくる
(もしかして私…傷つけてしまった?)
長い時間沈黙が続き、れいりはチラチラといざないの方を見ては戸惑っていた

「……あの…いざない?」

意を決して喋ってみる
「…私…言い過ぎたかもしれない……ごめん……」

返事がない

「……」 返答無し…
(まさか。いざないが傷つくワードがあったなんて…)
両膝を腕で抱え縮こまる。
何を言っても応えないだろういざないの意外な反応に動揺し、下を向いて反省する

「…別に」

「事実だし」
そっぽ向いて話すいざないは明らかに違和感がありとても重い
(うわ――空気が違う、相当気にしてる)
困ったれいりは何とかせねばと明るく振る舞った

「ホッ ホラ、一丁さん効果でそこまで回復したんだし、きっとフツーに戻るから」

「ダ―――何で私がいざないのエロ応援しなきゃなんないのっ 違う!! 何かが違う!!」
「……確かに違う」
フォローしたつもりが内容の変さにびっくりし自分で突っ込んでいる
「…じゃ、私がしがみついてもいざない気絶するの?」
「しねーな」
「へ?」
ふとした疑問が沸くも即否定
「女として見てねーんだな俺」
「は!?」
「どーみても“物”だし」
れいりのアホさに少し回復したいざないは、遠い目をしてれいりに振り向く
「モップとかめん類とかはたきとか」

ぶちっ
「だったら試してみろ」 ガバッ

怒ったれいりが横からしがみついた
「ホレ、何ともねー」 ケケッ
「~~~~~」
軽く笑い飛ばされ何とも無いをアピールするいざないにれいりは尚怒りが増した
「色んな意味で腹立つ――」 キー
「あのなぁ…」
今度は真正面からダイブ。やはり変化無し
「だからお前は何ともねーんだって」
「ムキ――」
いざないの両手が動く
「残念だったな、わたがし」
「ムキャ!」
優しくれいりを包むと、思い詰めた顔をして目を伏せる
(…あれ?……抱きしめられてる?)
頭をいざないの胸に突っ込んでいた為いざないの表情は見えず、抱えられてる感覚だけがれいりに伝わる
「……」
(こうしてても何とも無いと言うならやっぱり私は物…)
れいりは考えた
(ある意味私も傷ついた様な…)
何とも言えないへこみがれいりを襲う

「レオ…俺…」

ザザ~~~
「!」 ぱっ

いざないがれいりに話しかけた時、周囲の雰囲気が変わった為急いでれいりを自分から離した
「何か出た!!」
のっそ~と水面から大きな物体がゆっくり現れれいりは驚く
「迎え来たー、乗って~」
「ひらいさん!」 わっ
「相変わらずでけー」
シャチに変化したひらい るいこがのんびり声で二人の救助にやって来た

         *

〈あい、どーぞ〉
「れいり、流されたんですかっ」
「そーなの! いざないに引っ張られて小島で待ってたの!!」

〈いざない君…〉

陸地に到着した二人はそれぞれ別れ、れいりはイソネ達の方へ笑顔で走って行く
「副団長さんがいて良かったです」
「だね♪」 怒られたけど
「副団長かっこいい♥」
「クールだよねぇ♥」
(いざないファンは凄い美化するなぁ…)

〈何かあったのか?〉
〈何でも無いっす〉

一丁の所に走るいざないを憧れの眼差しで見送る女子達にれいりはタジタジ
「どんなにおきまりさんとくっついてもやっぱりかっこいいー。ファン止めれないー」 うわーん
「それは私達も同じ!!」
「うん!! 同士よ!!」
「…」
泣き喚くミヨシに同調する数名女子。
れいりとイソネは見守るしかなかった

「で、一位は」
「ひらいさんです」
「おお!! さすが!」
しかしすぐ落ち着きを戻し女子達のわいわいが始まる
「今日の試験は終了だそうです。宿に戻りましょう」
「うん」
全員が揃った所で海辺のお洒落なホテルに皆歩き出した

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック