マルー・クインクエ【七つの試験】・・・7

〔四の試験・お宝探し〕

「洞窟の奥底にある光る緑玉を探し出し、こちらの頂上まで持って来て下さい。先に頂上に設置されている台へ置いた者を勝ちとします」

ヘル繋ぎ仮面が見本である二センチくらいの丸い玉を皆に見せる。
頂上には玉を置く台と二人の監視員が待機していた
「ついで、ここで採取した物はそのまま自分の物として構いません」
〈おお!〉
「離脱の場合は中継点を通るまでです」
歓声が上がり女子の目付きが変わる

「では、始め!!」

皆大急ぎで洞窟の穴に吸い込まれていった
「まずは中継点だね」
「れいり、先行ってる!」
「うん」
取る気全く無しのれいりは坑道内に設置された灯りを頼りに壁を触ってゆっくり歩く。
お宝目指しミヨシはれいりに断ると、どんどん奥へ突っ切って行った
「イソネもいいよ」
「迷子にならないで下さいね」
「うん」
手を振ってイソネを見送る。
一人になったれいりは自分のペースを崩さず中継点を目指した
「一本道だし楽勝楽勝。あった♪」
大きな空間に中継点と書かれた設置台を発見し、置かれてあったペンを手に取る
「こうです れいりっと」 カキカキ

パシャ

中継点に来たと言う証拠写真も撮る

「じゃ、帰るか」

『……』
れいりは余裕の表情で右隣の穴に入って行った。
中継点から見て真後ろから来た筈だったが、気付いたソルムはそのまま付いて行く

         *

(開けた坑道はほぼ採取されてるのが常。ごく僅かな隙間を狙い潜り込むのが洞窟探索の極意!)
防水加工がバッチリ施されたスーツを身に纏い、ヘッドライトを点けたボスケ セイタはにこりと笑う

するっ

他の女子がこちらを見ていない事を確認し、セイタは小さな穴の中へ潜り込んだ

         *

「……何で?」
れいりの目前には出口とはほど遠く、何故か三つの入口がある
『プリセプスは違う道を来た』
「え!? 一本道じゃ無かったの!?」
『御意』
「……」
どこでどう間違ったのか何も分からないれいりは混乱した
「じゃ…又戻れば…………ええっ!? 二つ!!?」
振り返ると二つの入口がある
「…ソルム……もしかして私、迷子になった?」 後ろは三つ、前は二つ
『……』 フッ
ソルムが姿を現わす
「プリセプス、どうする? 宝があるやもしれぬが」
「へ…」
「まだ戻る事も出来る」
「…」
人は覚えないが道は覚える従者ソルム
「採った物は貰えるんだっけ」 うーん
「御意」
握り拳を口元に近づけ、れいりは考える
「…じゃ…ソルムもいるし…行ってみる?」
「御意」
「じゃあこっちの二つの入口のどっちか…」
一人では無い心強さがれいりにやる気を起こさせ、探索しようと言う思いが生じた
「プリセプス、こちらを見て欲しい」
「?」
れいりがソルムを見ると二つある入口の一つが消える
「左の入口だ」
「あ、はいっ れっつごー」
ソルムの言った事を素直に聞き、れいりは片手を上げ元気よく左の入口へ入っていく。
ソルムはれいりの扱いを完璧に覚えた様だ

         *

(緑の玉は…無いわね)
誰もいない空洞に一人佇むセイタは、玉が見当たらないので他を行こうと辺りを見回す
(この隙間は私は行けないわ…)

チュー

セイタが見つめる拳大の穴にネズミが入った

ささっ シャッ パタパタ

ネズミの後ろを追う様に次々動物が入って行く
(ネズミ一匹、ハムスター二匹、イタチ一匹、スズメ…一匹!?)
洞窟内とは思えない光景にセイタは考える

(…洞窟に住んでるのかしら)

         *

「どうしよ…暗くなってきた」
一本道になった坑道は徐々に薄暗さを増し、れいりの軽快な足取りが重くなってきた
「プリセプス、火の法を使えなかったか?」
「つ…使えるけど……あれは…」

シュッ

「鎖の先端に」
「…へ」
焦って躊躇うれいりをよそに、ソルムは鎖の先頭をれいりの眼前に置いた
「火も食す」 水は嫌う
「…そうなんだ。じゃ…イリジペラス!」
火待ちをしている鎖に法を放つ。
先頭と二番目の鎖に目と口が現れ小刻みに食べ始めた(怖い目付きはしていない)
「消える頃継ぎ足して欲しいが」
「あ、はい」
「大量に食すでないぞ、鎖」
ソルムには分からないが鎖は『はーい』と言ってシャクシャク食べている
(意外と雑食…?)
ソルムとれいりの間に位置した鎖は松明の代わりになり、れいりは鎖の食べっぷりを気にしつつ先を歩いて行く


「あっ 何か光ってる、何だろ」
「…」
洞窟では明らかに違う明るさを放つ場所を見つけ、れいりは急いで向かった

「うわ―――、きれ―――」

とても広い空間に辿り着いたれいりは、そこの美しさに感嘆の声を出した。
三十メートル近く高い天井に何本も透明感のある緑の石柱が色んな角度から突き出し、圧倒的な存在を見せている。
鎖の灯りに照らされ石柱達はキラキラと輝いていた
「すっごい! 緑色してるね。ここに玉あるかな」
「探してみよう」
「そだね」
れいりとソルムは玉を探す為、石柱部屋の隙間へと入って行く

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