マルー・クインクエ【七つの試験】・・・12

「あのっ ありがとうございました」
裏口に出た三人。れいりはまいちを前にペコペコと何度もお辞儀している。
ソルムはその間姿を消した
「何かお礼したいのですが…」
「いりません」
「え…でも…何か申し訳無いです…」
「………では」
慈善的行動であったまいちは何も考えていなかった。
肩に掛かったタオルに手を寄せれいりを見つめる
「私に欲しい物が出来た時にお願いします」 ニコ
(極上スマイル!!)
優しく微笑むまいち。
れいりは暖かい場所から極寒の地へ急に放り込まれたくらい強烈な一撃を受け固まってしまう
「~~~は………はひ…」
「失礼」

――三分後

ぴゅう~~~

『良い風だ』
「もっ…戻んないとっ!!」 はっ
氷付けから解凍したれいりは急いで女子がいる宿へ走った

         *

(ししょー芸者追加すっからいらんねくなった…)
増えた芸者に圧倒され部屋から逃げたいざないは、一息入れようと設置された自販機のボタンを押す。
爽やかな炭酸水を飲み休んでいると、窓の外でちらく影に気付き横目で眺めた
「……」
見覚えのある黄色のフサフサがぎこちない動きで走っている。
今度は廊下にオフィ以外の気配を感じ振り向くと、自販機横にあったゴミ箱にパンの袋を捨てる風呂上がりのアドがいた

はっ たたっ

「…」
いざないがいた事に気付いたアドはそそくさとオフィの隣に並ぶ

ス…

〈ん…?〉
いざないの視界が遮られた
「さんぼーちょー」
「間も無く終了ですね」 ガコン
まいちは自販機から飲み物を取り出す
「どうぞ。あなたは?」
「結構です…」
「………」
飲み物を出され顔を赤くし受け取るオフィ。アドも顔を赤くするが断っている。
いざないは三人のやり取りをじっと見ていた。
余った飲み物を片手にまいちは部屋へと歩き出す
(…ししょーが騒ぐから芸者呼んだ……のか?)
小さくなるまいちの背を見つめ、一連のまいちの行動を推測した

ガラ

「参謀長!! 団長を止めて下さい!!」
扉を開けると出来上がった一丁が芸者を求め這いずり回った後がある。
一丁から距離を取らねばとただおが“ウオルシルクリ”で壁を作って芸者達を守っていた。
『良いではないか良いではないか』と酔っ払い一丁が壁に顔をこすりつけ目の前が見えてない。ただおは必死で法を出していたが、後ろにいた四人の芸者はただおにいたずらして遊んでいる
「帯を解かないで下さい!!」
「キャー♥ かわいい♥ こうしちゃお♥」
「ええ!?」
〈おおっ〉
「増えてましたか」
繰り広げられるただおと芸者の攻防にいざないは廊下側の扉から顔を覗かせ観察し出す
「時間です。ありがとうございました」
「はーい」 またね♥
「!!」
仕事が終わった芸者は笑顔で帰って行った
「まいち! 延長は」
「しません」 はい炭酸水
きっぱり拒否。
一丁は涙を流し諦めて受け取った飲料をゴクゴク飲む
「さらば芸者達」
「もう休みましょう」
「…そうだの」
「いいさん、お疲れ様でした」
「さすがに団長と四人はきついですって…副団長一切手貸さないし…」
服がはだけ上半身が半分近く脱がされているただおは憔悴しきって息切れしていた
「俺は見る専門だ!」 良かったぞただお
「どこの監督ですか…」 もー
まだ廊下にいるいざないは、ただおにグッドサインを見せ自己満足
「よし! 明日ただおが無事マルーに残ったあかつきには祝勝会をしよう!! コンパニオンを呼んで」
「呼びません」
「……少しくらい」
「ダメです」
「……」←い・た
一丁の要求はまいち次第らしい。
女子がいる宿では皆風呂場に張ってる中、れいりは気持ち良く眠りについていた

         *

「七の試験はババ抜きです」

「これも得意分野だね」
「単調ゆえの手強さがあります」
「……」
会場入りした女子達に告げられる最後の試験。皆顰め面で険しいのは寝不足だけではないだろう。
イソネはすぐ戻って寝たので元気だ。
しかし隣にいたれいりはぐっすり寝たわりに顔色が優れない
「どうしたんですか、れいり?」
「…カードゲームってやると呪い降りかかってろくな事起きないから絶っ対するなって、おソノさんに言われた事あって…」
握った拳を顔に近づけ不安そう
「嵐でも来るのでしょうか?」
「それとも大きな事故!?」
「前に一度した時は何も起きなかったけど…あんまり面白く無かったからそれ以来やってない…」
「今日は仕事ですし、何も起きない事を祈るしかないですね」
「…だね」
「ルール分かる?」
「良く分かんない」
「ちょー簡単、あのね…」 こーで、あーで
「うん」
れいりはミヨシ達からレクチャーを受けている
「マルーの皆様は念の為こちら側のスタッフとして下さい」
繋ぎ仮面のスタッフがずらりと並ぶ
「三人の令嬢はマルーと戦う事になります。五回戦い勝率の高い者が上に行きます」
説明が終わり皆個室へと吸い込まれていく。
個室には三角形のテーブルと二人の繋ぎ仮面が待機し、三人でのババ抜きが開始された
「これで最後ですわ」
「お願いしますわモンタニさん」
「お任せあれ」
『くす』と笑い、優雅で余裕の振る舞いを見せるモンタニ リオは二人の令嬢に応援されながらマルーとの対戦に挑む

「地味だが中々に恐ろしい試験だの…」
上から個室の様子を眺める一丁達。
黙々と続くババ抜き会場は、ピンと張り詰めて重い空気が流れている
「副団長は得意ですね」
「まーな。俺みてーな能力が嬢にあると厄介な試験だぞ」
頬杖をつき真面目な顔でいざないは対戦を見続ける。
ただおはいざないの言葉にひやりと冷たい汗が頬を伝う

カチャ カチャ

負けたマルーの扉が開く音が聞こえ始めた

「ババ取ったべし!」
のの子が声を出し二人の繋ぎ仮面がびっくり

「これだよ、これババだよ、これ取って」
るいこの要求に焦る繋ぎ仮面

脳筋組はこの試験超不利であった

(私の相手が仮面でなくて助かりましたわ)

モンタニ リオがいる個室では、嬢対マルー二人という組み合わせの元ババ抜きがされている。
モンタニは配られたカードよりも二人の対戦相手をじっと観察していた

(私はほんの些細な顔の表情で、相手の心理を読み取っていく)

カードを引いた一人の顔が微妙に変化する

(ババはこれね) スッ
「あっ」
ババ以外のカードを取られ驚く女子
(そして焦ると無意識にこちら側に手が動く)
モンタニのカードが一枚になる
(そして運は私に味方する。負けませんわ)
残った一枚を女子が取りモンタニの手元に何も無くなった

「モンタニさん!」

審判の声でモンタニの勝ちが決まる


(私欲しいのまだかな――あ、来た)
れいりがいる個室では、カード待ちをしていたれいりにやっと巡ってきた目当てのカードが来る
「無くなった――」 わーい

「マルー」

手元に何も無くなりれいりが勝つ。
二人の繋ぎ仮面は失格となった

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