マルー・クインクエ【おもてなし】

「ちーす…」
ある日の午後、幹部集合室にやって来たいざないは、目の前の机に突っ伏し負のオーラを撒き散らす一丁を見て一歩下がった
「…ししょー、また何かあったのか?」
「ディックがいると聞いたのでオヴァを作った双子の所に連れて行って貰おうと、ソノにも言って派長室に行ったのだが」
ぐりんと頭だけをいざないに向け真っ青な顔の一丁は、口を動かすのも辛そうに今までの経緯を語り出す


「あ、イノシム明に帰っちゃった」
「!!!」
派長室の隣にある応接室に座るディックは背後に飾られている大きな緑の玉をバックにキラキラし、キョトンとしてイノシムの事を話す
「恋人も作りたいって言ってたから、暫く戻って来ないと思う。私が明に探しに行ってもどこにいるか分かんない。あちこち回るって言ってたし」

「……………」←ソ・一

ディックのすぐ側ではソノが、遠く扉に手を添えた一丁が顎が外れるくらいの大口を開けて卒倒していた


「つー事はフォートゥスにやっと着いたのか」
「四人と言っておった」
フォートゥス事情を知り腕組みするいざない
(にしてもタイミングいーんだか悪いんだか…)
「いつ戻るとも分からんのだ…オレの人生今度という今度は終わった…」
再びぐりんと頭を向こう側に移し大きく溜息を漏らす
「当分は何もする気が起きん…お前達適当にやっててくれ…」
一丁の落ち込み具合に躊躇するただおといざない
「団長もあんなですし、今日は走り込みにします?」
「…だな」
一丁を置いていざない達は集合室を出て行く
「副団長はどうでした? 出費」
「…今んとこ半分…確証が出たら全部だと」
「ひとまず半分だけでも良かったですね」
「まぁな…」

         *

どんどんどん!

「よしっ 材料オッケー!」
濃艶派の活動が休みであったれいりは、台所のテーブルに山ほど材料を乗せている
「ソルム、台に並べて貰える?」
「御意」
必要な量をソルムは次々並べていく
「下準備、行くよー!」
調理器具を持つとれいりは目の前の敵に笑顔で取り掛かった

         *

――お昼ちょい前、マルー応接室

「お待たせしました! 行きましょうかディックさん」
「うん♥」
待ってましたとディックは勢いよく立ち上がり、派長に断ってれいりと一緒に歩き出す

「あら、お出かけですか?」

「るうりん! こんにちは」
ディックに会いに来たであろうるうりんと通路で出会う
「うん! 今かられいりの家にご飯食べに行くの♥」
「え?」
「良かったらるうりんさんも如何ですか!!!」
ぎょっとしたれいりは慌ててるうりんに提案を述べる
「…ですが、急に私が加わって良いのですか?」
「全っ然問題ありませんっ いっつも多めに作るんで!! はいっ」
「るうりんも行こ! れいりの料理美味しいんだって♥」
れいりの必死振りに気付かないディックはのほほんとるうりんを誘う
「え…はい……でしたら、お言葉に甘えて」
「わー♥」
控えめだが眼前が明るくなったるうりんは、喜んでディックの隣に並び連れ添った

〈こっちから行こっ〉
〈はい♥〉

一難去った事に安心し、後ろでれいりが大きく息を吐いている

         *

「うわー、美味しそー♥」
「まあ、お上手」
次々と卓に並ぶ料理にディックの歓喜する声が響く。るうりんも料理の美しさに目を輝かせている。
今回の料理は卵を使ったレパートリーだ
「客間は二人で一杯なんで、私達は台所で食べますね」
「うん♥」
並べ終わったれいりは笑顔で客間を後にした
「ごゆっくり♥」 パタン

〈いただきまーす。わー、おいし~♥〉
〈まあ、お店みたいです。ディック様、お茶を♪〉
〈ありがとー〉

(るうりんさん、ご機嫌で良かった)
客間から聞こえる声に胸を撫で下ろす
「いただきまーす」
「いただきます」
台所に戻るといつもの様に二人の食事が始まった
「プリセプスは従者にも向いてるかもしれぬ」
「え?」
一連のれいりの行動を見ていたソルムの感想が零れる
「美味な料理で人を喜ばせられる。あの混ざりもディックといられて機嫌が良い」
「るうりんさんは分かりやすいから私も協力出来るけど、私弱いから従者はどうなんだろ…」
困った様な照れた様な曖昧な笑いのれいり
「分担する従者もいる」
「そうなんだ。だと私は料理担当になりそう」 アハハ
和やかに食事が進む


「さて、デザート持ってこっと」
冷蔵庫からお手製アイスを取り出し客間へ向かう
「デザートどうぞ」
「れいりさん、お料理上手なんですね」
「これしか取り柄無いですけど…」
れいりは褒められ謙遜するが嬉しそう。
パグもお行儀良くるうりんの隣で食べている
「れいりの料理美味しいって言うのすっごく分かる♥」

ガラ
「何だこれは!?」

(げ!)
玄関から聞こえる罵声にれいり固まった。
声の主は一直線に客間にやって来る
「れいり!」
「リーダー、お邪魔してます」
「こんにちは♪」
「るうりん!? 金髪イケメン!!……!」
客間の全容にソノは驚く。が、客間右奥にいた人物にソノの眼光が鋭く光る

(超絶イケメン!!!)

ガシ!
「ぐあっ」

れいりの背後タックルを受けソノの動きが止まった
「ソルム逃げて!! すぐ逃げて!!!」
「…」
「はなれんかれいりぃ~~~」
「はなすか!!」

フッ

「んな゛っ」
ソルムの姿が消えた
「なら金髪イケメ…」

すっ
「リーダーはすぐ発たれるのですか?」

ディックに行こうとしたソノの前にるうりんが立ちはだかる
「…おソノさん、出掛けるの?」
「放浪の旅兼情報収集だそうです♥ ね、リーダー」
「………ああ」
「気を付けてくださいね」
狭い客室な為回り込む事も出来ず鉄壁となったるうりんがディックを守る。
ディックは周りの事情を把握出来ずにただデザートを食べていた


〈くっそ…〉
荷物を持ったソノが悪態付き付き家を出て行くと客間は穏やか空間に戻った


「私達後片付けしてから戻るんで、るうりんさんとディックさんは先行ってて下さい」
「そうですか?」
れいりと姿を現わしたソルムは食器を纏めて片付けを始めた
「美味しかったです。ごちそうさまでした」
「れいり、ありがとー」
二人は笑顔でマルーへと戻っていく

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