作戦依頼・・・2

〈では、出かけてきます〉
全体派が泊まる宿、ただおが夜の会食に誘われ出て行った。おそらくジンホウが令嬢にお願いしたのだろう

「副団ちょ!」

ただおと入れ違いに入って来た典型派がいざないに声を掛ける
「んじゃ、行ってくるっす」
「ああ、典型派の好意を無駄にするでないぞ」
「……うす」


典型派の宿にやって来たいざないは、賑やかな声が聞こえる部屋の扉を開く
「副団ちょ、おいで!」
「のの子もう食べてるよ」
「…ああ」
タワー状に積み上がった料理を上からガツガツ食べ続けるのの子の隣に誘導され座ると、いざないを待っていた他のメンバーは各々注いだグラスを持ち上げた

「いただきまーす」 カチャーン

(あん時と違って気にする必要ねーしな)
食事を始める皆と一緒にいざないも自分の前にあった料理を取り食べ出す
「うまーい!!」
口に入れると広がる食材の香りと味に典型派の顔が綻ぶ
「上手だね」
「今度教えて貰おうかいなー」
「おいし♪」
絶品な料理に会話が弾む
「何だ、知り合いが作ったのか?」

ぎくぅ!

話を拾ったいざないに周りが凍り付く
「そっ…そうなんよっ」
「この辺で店開いてる仲間が特別に作ってくれてさ」
「そうそう」
『ヨウト かひで』が身振り手振りで説明し、周りもぎこちない動きで相槌
「誰?」
「るい子の知らん奴! 後で教えたるん」
「あい」
るい子の問いにびっくりしたハギが急いで丸め込む
「ふーん…」
典型派の様子に違和感を覚え何気に手に取った料理をじっと見た。
現れた輩は怪しい三人組で、いざないは知らない人物だ
(変わった奴らだな…。――ま、食えりゃいいか)
いざないの審査を通過後、普段通りパクと食べ始める。
ハギ達はほっと肩の力が抜け安心した

ワイワイワイワイ

「順調に食べてるみたいです」
典型派がいる部屋を廊下を挟み遠くかられいり達は様子を窺っていた
「れいり君はお休み下さい。後は僕見てるんで」
「いえ」
ジンホウに振り向きやる気満々の瞳
「依頼を受けた以上、しっかりと最後までいます!」
キラーンと掛けてた眼鏡が光ると再び部屋を窺い始めた
〈フフフ…早く次の工程に行かないかなー〉
「気にする様子が全く無いと言うのが流石というか」
「…」
れいりにとって今回の依頼はいざないに仕返す事が出来る絶好の機会だ。本人は無自覚ながらも楽しくて仕方無く悪い顔でニヤニヤしている。
ジンホウとソルムはれいりの様子をそっと見守っていた


「ごっそさん。んじゃ俺帰る…」
「副団ちょ、部屋用意してあるんよ」
「…は?」
出て行こうとするいざないをハギ達が通せんぼ
「この奥」

バーン

奥部屋を開くと寝具一式綺麗に用意されていた
「あたし達はこっちの部屋で寝るからゆっくりしててー」
「たまにはのの子と一緒にいてやってよ」
「……」
「最近は会うのめっきり減ったそ?」
奥部屋を凝視しながら話の流れについていけずいざない硬直
「のの子、ここにたんと食いもんおいとくん」
「べし」
「おいっ、の…」
食べ物の袋に釣られ、のの子は奥部屋に駆け込んだ
「さっ、副団ちょも!」
典型派の力に抗えずどんどん奥部屋に押されていく
「ま…まて、今は任務中だぞ!! 私用禁止だろ!?」
「それだといつなるか分からんもん。今日はもうええよ」
「なっ…」

とん バン! カチャ!

「カギ!?」
閉じ込められた事にびっくり

バクバクバクバク

「………」
夢中で食べてるのの子を背に呆然と閉まった扉を見続けた

「……」←ア・オ

隣の部屋で立ち竦む二人の兵。
ハギ達は廊下に顔を出し拳を突き出すとれいりに合図する
「二人は廊下来てーて」

〈さて寝るーよん〉
〈うん〉

寝具を出し我先に寝始める典型派。
『コクイ シブキ』に言われアドとオフィは廊下へと出た

「……! ジンホウ様」

「これは博士――…いさいさんの頼みなので傍観でよろしく」
「…は」
二人に説明後ジンホウは次の準備の為いざない達がいる部屋の隣室へ行く。
典型派も扉を閉め就寝に入った。
廊下で待機する事になったアドとオフィはそのまま典型派の扉前にいるが、落ち着かないオフィは不安な顔をして扉を見つめている


バクバクバクバク
冷静に状況を考えた後いざないは腕組みし底無し胃袋のの子をじっと見ていた
(……のの子はまぁこんなだから良いとして…ただおかししょーが来るまでいるしかねーか)


「さて、様子を聞き取りましょうかね」
「はい」
お手製道具を取り出し壁に設置後、れいりとジンホウは耳を近づけ中の様子を窺う
「のの子さん食べてます」
「いざない君は動き無いですね。効果が現れるまで少し待ちましょう」
「はい」
中から聞こえる音はのの子の食料袋を動かす音と食べる音
「いいさんが戻るのは予定で真夜中」
「一丁さんは今行って貰ってるので、当分迎えは来ません」
「誰かに足止めを?」
「はい、この状況で好条件の人を」
れいりの瞳が光りニヤリと笑う

         *

――全体派がいる宿

「いざない遅いの」
風呂帰りの一丁はいつまでも来ないいざないを気にかけた
「まいち、先に休んでおれ。呼びに行って来る」
「はい」
まいちと別れ飲み歩きしながら廊下を歩く

ぐいっ!

急に曲がり角で腕を引っ張られ驚くと、腕先には見知った人物がいた

「だんちょ…♥」

「…しょく君ではないかっ!」
「うんそう♥ だんちょ」
艶めかしく笑う『しょく だびい』は顔を赤らめ一丁の腕に体を這わせる
「好き♥」
一丁の目の色が変わった。
キョロキョロ周りを確認し誰もいない事を知ると、しょくの腕を掴み走り出す
「こっちへしょく君!」

パタン

空き部屋を見つけ二人は潜り込む
「良いのかっ…本当に良いのか?」
「うん♥ だんちょ、早く♥♥」
向かい合った二人。一丁はしょくの両腕を掴むと息は荒く眼光開きっぱなしで徐々に近づいていく
「しょく君!!」
「だんちょ♥」
お預け解除になった一丁はしょくに覆い被さった

「しょくさんに決めて良いのですね。団長」

びくぅ!

目の前にいた人物に大いに驚く
「ま…まいちっ いつからそこに…」
「しょくさんはマルーの人員です。私達の世話人である派長と夫人に報告をし、ちゃんと身を固めなければなりません」
目前にいた理由を語らずまいちは淡々と話しを進める
「しょくさんのご両親にも挨拶しに行かないとですし、彼女は変化界の人です。失礼の無い様にしませんと」
まいちを見上げる一丁は固まったままだ
「結婚後は所持していた本の類その他全て処分します。副団長の所持品も同様に処分です」 連帯責任
「!!?」
一丁は衝撃を受け真っ白

「もう一度聞きます。しょくさんで良いのですね?」

念を押すまいちの言葉に一丁の顔からは脂汗がタラタラタラタラ流れ続けた

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