作戦依頼・・・3
(遅ぇ…)
部屋では食べるのに満足したのの子が横になり、いざないも離れた所で背を向け横になっている
(つーか妙に目が冴えて落ちつかねー…)
頭を手で支え顰め面でソワソワし機嫌がよろしくない。いざないは自問自答を繰り返しひたすら迎えが来るのを待っていた
(んな所に押し込まれたからか…)
ふと、いざないの背後で見下ろす黒い影がゆらりと動き近づいてくる
『いざない!』
『――!! のの子!?』
隣室の様子が変わった事にれいりとジンホウはより壁に耳を寄せた。
いざないはぎょっとしのの子を見上げる。
やや動揺するがのの子のジェスチャーに気付くと笑みが零れた
「いいぜ! 相手してやる」
いざないは体を起こし体勢を整える
『行くべし!!』
『おう!』
(おお!?)
佳境に突入かとれいりはハラハラドキドキし聞き入った
ドッゴーン!
〈はえ!?〉
大音量と宿の揺れに驚く
「外に出て行った」
ソルムが窓を見ると二人が走って何処かへ向かっている
「壁壊して!?」
「追いましょう」
ジンホウ達は廊下を出て急いで二人の後を追う。気付いたアドとオフィも後に付く
同じ頃、意気消沈ししょんぼりしているしょくをまいちが宿に連れて来た。途中、繁みから走る五人の姿を確認する
「行くべし!」
「かかってこい!!」
岩が切り立つ海辺に辿り着くと、のの子は雄叫びを上げオオカミに変化。岩場を駆けてジャンプしいざないに飛び付くといざないは素早く避け拳を突き出す
「………」
「……脳筋に走りましたか」
どう見ても訓練に見えた為れいりは唖然としジンホウは困り笑い
「依頼が失敗に…」
ショックを受けたれいりは側の木に手を置き落ち込んだ
「大量投下しすぎたのかな…」 うう…
「元々明暗は解毒作用強いですし、効果は期待してないんですよ」
「え!?」
「ただ、混ざりの場合程の部分でどれだけ効き目あるか見たかったので、博士に協力したんですけどね♪」
「そうだったんですか…」
アドとオフィ、ソルムは気配を感じ後ろを見る
「こうしてみると多少は効いてるみたいです」
のの子といざないを観察するジンホウは、いざないの雰囲気が違う事に興味津々。
訓練しているいざないは笑いが止まらず楽しそうだ
「血の量で比例するのかな♪」
「失敗したんで私依頼料いりません」 はぁ
「博士には僕から言っておくし、気にする必要ないよ」
れいりに振り向くとジンホウは彼女の後ろにいる人物に気付く
「いえ! 子作りするまでが依頼ですし…」
木に手を置いていたれいりの上に一回り大きな手が添えられた
「詳しく聞かせて貰えませんか? こうですさん」
「~~~☆△◎▲▢!!」
覆い被されそっと囁くまいちに脳天直撃
「はひ! いざないに子作りさせる為動ひてまひたっ!!」
「即バレですか。恐ろしいですね、彼」
失神一歩手前まで陥り回らない口を必死で動かしては暴露する。
静かに見ているソルムとジンホウ
「そうですか」
ガクガクと痙攣するれいりから離れたまいちは訓練してる二人を眺めた。
いざないとのの子は相変わらず戦いに没頭中
「しょくさんを送ったのはこうですさんですね」
「!」
ハッとしたれいりはまいちに深くお辞儀する
「すみませんっ 一丁さんを止めておきたくてご迷惑を!」
「団長はいつもの事です」
顔を上げられなくなったれいりはペコペコ頭を上下しとんでもない事をしてしまったと深く詫びている
「――が、団長が関わる場合は私も知っておきたいので、その時はこちらに」
「!!」
れいりの手を両手で包みメモ紙を渡す。
前のめりで何が起きたか分からなかったが、まいちに触れられている事を知ると目が飛び出すくらいびっくりし手元を凝視
「私直通です。僅かばかりですがお手伝いしましょう」
(こ…これは) わなわな
れいりの手には数字が書かれた紙。
その紙は光を放ち持つ手が震えで止まらない
(幻の プリンスの連絡先――!!!)
両手で優しく掴み輝く紙を高々と持ち上げる
「もはや神の領域です」
「変わった動きが数段増している」
膝を曲げかしこまり神託を受けたかの様なれいりは、受け取った連絡先を仰々しく敬っていた。
遠巻きに呟くジンホウとソルムは平然と見守り、アドとオフィは力が抜けた様子でれいりを見ていた。当のまいちはいざない達を見ている
「当分落ち着きませんか?」
「夜明け前には切れるかと」
ついでにいざないを連れて帰ろうと思ったまいちはいつまでも止まない二人を見続ける。
その間もれいりは体をプルプルし紙と睨めっこしていた
ハッ
「ジンホウさん、私はこの辺で…」
「ありがとう。お休み」
我に返ったれいりは速攻で紙を懐に収め宿に行こうと歩き出す
ぐらっ…!
急に大きく地面が揺れ出しバランスを崩す
「地震か!」
激しい揺れが一帯に広がりいざないは動きを止め待機した
ガラガラッ
「のの子!!」
岩に張り付いていたのの子の頭上に剥がれた瓦礫が次々と襲い掛かる
シュウッ オオオ…
変化を変えたのの子の背に羽が生え、瓦礫を避けると音波で破壊し何を逃れた
「ガルゴか! スゲーな!!」
「べし!!」 フオオオ
いざないの所に降り立つと変化を解除しのの子に戻る。
揺れが落ち着く頃いざないは眉を寄せ思案顔
(発明から大分遠い。“風”って訳じゃねーよな)
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