オチデドゥム・・・2

ザッ…ン  ドバッ

噴き上がる鮮血にいざないは目を見開く。
ディック、るうりん達は戦慄した

コテッ

れいりは風に吹かれた様に軽く倒れた
「れいり!!」 だっ
ディックは急いでれいりに近づき状態を把握する
「れいり! れいり!!」
「…」
「血が凄いよ!! どうしようっ! れいりー!!」
れいりの症状の酷さにディックが叫ぶ。
ソルムは硬直したまま動けず離れた場所にいた
「誰か…回復出来る人……誰かぁ…!」
嗚咽混じりのディックの声がМに響く度、Мの脳裏に何百という仲間の倒れた姿が浮かび上がる

ガク

戦意喪失したМは膝を折り崩れる様に座り込んだ
「いざない! 陣だ!!」
茫然としてたいざないにTが一喝
「心を乱すな! オチデドゥムを還す事だけに集中しろ!!」
「――っ!」 チャ

パアア

いざないは眼鏡を外すとオチデドゥムの塊へ陣を放つ

「……鎖、プリセプスの回復は可能か?」
『アンの生物だもん。ムリー』
「…そうか」 ぎゅ
しょんぼりした鎖の目がソルムを見る。
理解したソルムは腕組している手に力を込め立ちの姿勢で堪えていた

「れいり、目開けて。れいり…」
どんなに呼び掛けてもれいりは目を瞑ったまま反応が無い

「…何か回復薬は無いのか!!」
「探してきます!」
「このままではれいりちゃんが…!」
一丁達も我に返りただおが船に向かう

「…ジンはいないし……誰か……れいりを助けて…」
泣きじゃくるディックは頼りになるジンホウがいない事に、より辛さが増していた
「誰か……!!」
何も出来ないいざないも苦しさがこみ上げディック達を見てる事しか出来ないでいる

〈―――せて〉
ハ…

「アンジェルサラス」
マルーらくがき65.jpg
頭上から声が聞こえるとれいりの前に降り立つ人物が法を放った。
眩い光と舞い落ちる羽根。突如現れた明人に皆言葉を失い見続ける
「…あの人は」
船に探しに行こうとしたただお達も足を止めディック達へ顔を向ける

「……ああ…」
〈綺麗ですうの〉
〈ええ、ええ〉
るうりん、さしこは安心し涙ぐむ。羽と光に照らされた明人の美しさにまりもとばあやは見入っていた

「サニタ―!!」

回復が終わると頭に鳥型の幻獣を載せたサニタ―がディックに微笑んだ
「うわーん。サニタ―来てくれて良かったー」
「れいりが大ケガしたらすぐ来る様になってたんだ」
ディックは大泣きしサニタ―にしがみつく
「でも今までさっぱりだったんで驚いた…」
「れいり、まだ起きない…」
「大ケガだったしびっくりしたんだね。一眠りすれば起きると思う」
ディックはれいりの上体を起こすがまだ眠ったままだ
「……」
れいりが無事だった事にほっとしたМは静かに涙を落とす。
TはМに近づく事はせずに静かに眺めていた

ぐおおおおおおおおお

「いざない!?」
「くそっ 何だってこー言う奴らはしついこいんだ!!」
いざないは歯を食いしばり法を出し続ける
「切断部分が付き始めた!! 還しても戻って来る!」
法陣の中ではファルチムが鎌で還すも再び戻って来てはくっついての繰り返しになっていた
「ファルチム今どこからだ!」
『…………六倉庫です…』
「お前またつまみ食いか!!!」
『ちがっ…!』
『なに…?』
「…そこからでは風まで遠いな」
女帝が応戦しているのでファルチムは歯切れ悪く答えるがいざないが暴露した。
後でお叱りを受ける事だろう

〈サニタ―〉
〈ん?〉
れいりは落ち着いたが、まだいたサニタ―にディックは声掛け

「ファルチム、どんどん下に送れ!」
『…分かった!』

「この法陣、壁に穴って開けられる?」

側に来た声に驚きいざないは横を見る
「……開けらんなくもねーけど、中にいる奴らにも…」
「その時だけ離れて貰って」
緊迫した状況にそぐわないニコニコ笑顔のサニタ―が立っていた事にいざないは気が抜け掛けている
「ファルチム! 今から穴開ける! 同時に端へ避けろ!!……じ…女帝! 髪溶かしたくねーなら引っ込めろ!!」
『!』 しゅっ
オチデドゥムを引き込むのに参加していた女帝は素早く髪の毛をしまう
「行くぞ!」

フッ

「アンジェルサラス」 ピッ
サニタ―の人差し指から法が放たれると、器用に穴を通りピンポイントでオチデドゥムに降り掛かる

ぐおおおおおおおおおお

これまでにない雄叫びが響き渡ると、退避していたファルチムがビビッて縮こまっていた
「本当だ! 暗は溶けるんだ」
「…自由自在か…あいつより性能良いな」
溶けるオチデドゥムに戸惑うサニタ―。
サニタ―の優れた法捌きにいざないは感嘆する
「どこで止めるといい?」
「動けなくなるまで頼む」

おおおおおおお

「…まだ余力あんな…も少し!」
「……大丈夫?」
サニタ―は不安そう


「ファルチム、行け!」

ぶん!

原型を留めてない肉塊にファルチムは鎌を振り下ろす

トフン ルオオオオオオオオ

〈うわー〉
オチデドゥムが完全に還った事にいざないはほっと一安心。
噴き上がる光の柱を間近で見たサニタ―は感動している
「助かった…」

じー

「…?」
礼を言ういざないを食い入る様に見るサニタ―
「暗の髪って綺麗だなーって。こんな近くで見るのも初めて」
「…俺は混ざりだけどな」 カチャ
「そうなんだ。れいりと一緒だ」
ディック同様暗人の髪に見入るサニタ―に一応説明しながら眼鏡を掛け元のいざないに戻っている
「れいりのお友達?」
「……同じマルー」
「そっかー。れいり良い子にしてる?」
「…してるんじゃねーの」
れいりとの共通点を見つけたサニタ―は人懐こくいざないに質問を始め、いざないは引き気味で返答している
「れいりの事好き?」
「は!?」
突拍子の無い事を聞かれギョッとした
「…れいりって嫌われてる?」
「……! それは、ねーと思う……多分…」
質問の意図に気付き困惑しだす
「そっか♥」
「ディック!!」
「サニタ―、ありがとう♥」
「うん♥」
近くにいたディックに助けを求めいざないは二人から距離を取った

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