オチデドゥム・・・3
「どうする? れいりこのまま二層連れてく?」
『明との会話は疲れる…』と呟き歩くいざないは、サニタ―の一言に動きが止まる
「でも、れいりこっちに恋人いるし二層行ったら会えなくなっちゃう」
「あ、そうなんだ」
サニタ―はディックの言った事を考えた
「…ん? じゃ、二十歳なっても二層行けないよ」
「あ、本当だ!」
「……」
違和感ありの会話にいざないは二人を見ている
「何人いるの?」
「んーと、三~四人?」
「!?」
驚いて体ごと振り向いた
「そっか。なら連れて行かない♪」
「うん」
『またね』と手を振りサニタ―は座って放心状態のМの元へ行くと手を目の前へ出す
「帰ろ、ミング・カピト」
優しく微笑むサニタ―を見たМは涙がこみ上げガシとしがみつく
「じゃ」
サニタ―はМの頭をあやすように撫で続け皆に挨拶して戻って行った
「ミング・カピト、大丈夫かな…」
〈そーとー応えたなこりゃ〉
見送るディックはМの落ち込み具合に心配。いざないも気にはしてたがふと、視界にTが入って来る。
茫然として見送ったTに気付き汗
「ディック…ちなみにサニタ―はМの恋人か?」
「違うよ。大戦前はいたけど皆死んじゃったって。それ以降は恋人いないみたい。サニタ―はいつもあんな感じ♪」
「…だとさ、T」
「…ああ」
安心したかTはフードを被り顔が見えなくなる。
側にいたインは戸惑っていた
「プロパガショネムを追おう。医療隊(魔物の対処)、兵(T達へ続く)が到着したら滞りなく伝えて欲しい!」
「はいっ」
〈どしやさん、我々が!〉
〈任せたと!〉
風切り隊が役目を担い幹部はTの後を続く事となった
「ディックはれいりと共に戻ると良い」
「うん」 ソルムー
「……」
ディックはれいりを抱えその場を動かないソルムの元へ行く
「ディックが抱えててくれないか。このまま部屋へ戻ろう」
「うん」
ソルムは法陣を張りその中にディックも入る
ヴォン
「……」
いざないは気にしながら三人が去って行くのを見ていた
「ソルムさんも大分参ってるみたいですねぇ」
「…あんたはそこでずっと見学してたのかよ!」
岩陰からそっと姿を現すジンホウ
「ここに来たのはれいり君が傷を負った直後です」
「?」
ジンホウも心なしか元気が無い
「正直焦りました。僕の持ってる傷薬程度で治せるのかと」
「…」
「サニタ―さんが来てくれて本当に安心しました」
ジンホウの顔が徐々に夢心地に惚けてくる
「それに、回復の法が美しくて見とれてしまって」 思い出しただけで溜息が漏れます
「……明マニアが」
うっとりするジンホウに突っ込む
「いざない!」
「…ああ!」
Tに呼ばれプロパガショネムの後を追おうと足を動かす
「追った所で逃げられるでしょう」
T達の死角にいたジンホウは岩陰からこっそり皆を窺った
「インはテネヴさんに付きっきりですね。いざない君も行って下さい」
アタッシュケースを持ち繁みへ歩き出す
「ジンホウ、お前何処へ」
「この辺りの調査です。終わったら帰ります」
「…」
笑いながら消えていくジンホウをじっといざないは見ていた
繁みを数百メートル進んだ頃、目印を見つけ顔が綻ぶ
「ダイヤ君、位置付けありがとう♪」
浮かんで待っていた一つのダイヤは目が吊り上がり見張りを担当していた
くるーん
五体が揃うとくるりと回転し法陣を作り始める。
出来上がったのを確認し、ジンホウは陣の中へ踏み入った
「さっ 行きましょう」
ガシッ ヴォン
腕を掴まれ振り向くも誰か分からずそのまま何処かへ移動してしまう
「……皆さんお揃いで来てしまいましたか」
掴んだ相手は誰か容易に想像出来たが、その後ろに滑り込みでいた二人の兵を見て人数の多さに苦笑した。
ダイヤはそそくさとジンホウのポケットに入って行く
「…ここは何処だ」
「物置でしょうか」
辺りを見回すと家具や物で埋め尽くされている
「…何企んでる」
「僕のは行き当たりばったりだって、前に言ったと思いますが?」
「…」
疑う様に睨むいざないに軽く笑う。
噓とも真とも言える言葉にいざないは困惑する
ゴゴゴゴ
「動き出しましたか」
周囲と体が揺れいざない達は驚く
「ま、落ち着くまでここにいましょ」
「…だからここは何処なんだ!」
揺れる中バランスを取りジンホウに問い詰める
「そう言えば」
「?」
「ディックさんの中では一体誰がれいり君の恋人になっているのでしょうね」
「……」
手を口元に添え笑い出す
「思い出したらまた可笑しくなって来ました」 三~四人って
「…笑ってねーで質問に答えろっつーの」
全然違う話題に拍子抜け
「いざない君もサニタ―さんにタジタジでしたし」 お腹痛い…
「いい加減本題戻れそこ!!」
大笑いするジンホウに怒り出す
「ああ、そうでした」
「ここは“ハナゾノ”ですよ」
「!?」
外は上空数千メートル。大型の飛行船が優雅に飛んでいた
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