ベス・・・2
「飲んだわね」
「ええ」
空のグラスをテーブルへ置いた
「じゃあ答えなさい、本当にあなたは誰にも言ってないの?」
「言ってません」
「マルーとの繋がりは?」
「仲介者です」
「名前は?」
「ジンホウ…ジンと言って下さい」
尋問に詰まる事なく答えていく
「あなたの名前は?」
「ベスで良いわ」
「ベスさん、僕はこの部屋から出なくて良いのですね」
「そう」
警戒を解いたベスは立ち上がりジンホウの眼鏡を外す
「ジンはわたしのハナゾノ♥」
その後着てる服も脱がし始めた
「あなた綺麗だわ。今まで会って来た男の中でダントツよ」
露わになった体を眺めベスは顔を撫でる
(プロッパには、渡さない――)
そのまま唇を重ねる
ゴク
次の瞬間、ジンホウがベスの頭を抱え口を開けさせると奥へ何かを飲み込ませた
「……何を」
驚き離れたベス。数秒後、体のあちこちが赤く爛れて蒸気が出て来る
「体が!!」
鋭い痛みが体中にはびこり、ベスは立っていられず膝をつく
「ジン! あなた…」
プッ
口から包みを吐き出す。床に落ちた包みからは溶けた液体が蒸気を発し揺れていた
「ひ…っ 痛い!!」
「丁度、被験者が欲しかったんです」
「!?」
「やはりまだまだですねぇ」
ベスの状態を見て感想を述べている
「“先への希望”、聞いた事ないですか? 僕そこの研究員なんです」
「………世迷い言の思想が…!」
「世迷い言ではありません。着実に完成へと近づいています」
蹲るベスの背後へ回る
「痣は背中ですか。消えては現れての繰り返しですね」
ベスは歯に力が入りギリと噛み締める
「カロ!!」 ばっ
人差し指と親指を広げ法を放つ
「無理ですよ」
「!」
「“それ”は暗の血を著しく消失させている」
法は不発に終わった
「今のあなたは僕以下の能力です」
ベスは法を放つ体勢のままガクガクと震えだす
「そうそう。血の契約ですが、まさかこんな所で役に立つとは思わなかった♪ ちょっとした興味本位である人の血舐めちゃったんです♪」
試験管の並ぶ部屋でジンホウはなんとなく血をペロと舐め、それを見たインが驚愕していた
「先に摂取した方が優位となり、あなたはその人より能力が低いので尚太刀打ちできなかった」
※能力が高い場合は上書き出来る
「バラしますと大元は女帝です♪」
実際はいざないの血だが、ジンホウは絶対いざないに言う事は無いだろう
ばっ
「誰か来なさい、侵入者よ!」
力を振り絞り内線を手に取る
ズズ…
「始まりましたか」
船内が大きく揺れ内線が搔き消される。
否、元々切られて通じる事は無かった
「実を言うと最初からあなたに絞って近づきました」
落ちた眼鏡を拾い掛け直す
「同じニオイを感じましたので、先手を打たなければと思ったのです」
窓側に行くと隠していたアタッシュケースから注射器を取り出した
「薬の効果で動くのもやっとな筈なのに大したものです」
液体を取り出し準備する
「完成するまでずっとあなたはそのままなので静かに寝てて下さい」
「~~…さない」
ジンホウは注射器に液体を注入しておりベスへの注意が逸れていた
「わたしをこんな目に遭わせたあんたを許さない―――!」
どっ
ジンホウの脇腹へ目がけ刃物を突き立てる。手応えがあったベスは歪な笑みを浮かべた
しかし、ベスが見た物は刃先が壊れボロボロに落ちる自分の武器と、小さなダイヤ型の生物であった
「見えない所を守ってくれるんです。良い子ですよね、ダイヤ君って」
落ち着いた様子でジンホウは視線をベスへ向ける。褒められた事に嬉しいのか睨んでいたダイヤの目が丸くなりジンホウを見つめていた
「そうか、完成してあなたを治したら僕恨まれるんだ。それは困ったな」
新たな事に気付き少し悩む
「では、廃人になる“何か”をプロッパさんから拝借しましょう♪」 くす
ぞっ
狂喜を孕むひやりとした笑みを浮かべるジンホウにベスは凍り付く
「イ…イヤ…こないで…」
プス
「イヤアアアアアアアァァ」
ベスは気を失い眠りについた
カチャ
「ご協力感謝します。ベスさん♪」
荷物を持ち、ベスの部屋を後にする。
セットする道具を持ってこなかったジンホウは髪がボサボサのまま次の目的地へと歩いて行った。
外は青空、真下は密林に入りどんどん奥へ進んで行く
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