マルー・クインクエ【揺れる濃艶派】

「いざない! ようやっと出られたか!!」
「…お騒がせしたっす」
全体派集合室に現れたいざないは、入口で深々とお辞儀した
「なに、お前が健在なら何も言う事は無い」
部屋の真ん中で一丁は満面笑顔
「夕飯は美味い物を食いに行こう!!」
「予約してきます」
「頼んだ」
「最近ずっと外食です。栄養偏りますって」
まいちが手配をしてる間、ただおが一丁に注意している
「固い事言うでない。明日から控えよう」
「必ずですよ」
いざない復帰の事もあり、ただおは目を瞑る。
いつも通りの全体派のやり取りにいざないの強張っていた表情が和らいでいた
「ししょー、今日は探しもんあるんで明日からいいっすか?」
「おう! 夜には来るんだぞ」
「うす」
一丁に断るといざないは寮に向かう

         *

――派長室

「え…おソノさんが濃艶派脱ける!?」
れいりは目を丸くし驚いた。
派長室には夫人、るうりんがいる
「世界を渡り情報を集める仕事に就いて貰う事になりました。しきさんも同行します。お二人がマルーに戻る事は滅多に無くなるでしょう」
台に手を置いた夫人が淡々と話を続ける
「そこでふありさんと相談したのですが、ふありさんもこうですさんの補佐と言う形でマルーに来て貰っていたので、濃艶派リーダーとしてはそぐわないと話を頂きました」

〈そうだったんですか?〉
〈ええ〉

隣に並ぶるうりんは尋ねられると頷く
「かんこさんも外出する事が多いので、リーダーとしては不向きかと思われます。よってふありさん、かんこさん幹部とこうですさんは濃艶派を脱けて貰う事にし」
れいりは『え?』となり夫人を見る
「マルー直属の特別幹部として籍を置いて貰います」
「!」
下がった眼鏡をくいと戻す
「あの…私、一般人員じゃ……」
「こうですさんは二層に戻ると言う話もありますので、ふありさんと共に特別幹部としていた方が良いとの判断です」
「……はあ」
「今までの濃艶派は解散となり」
「え!?」
「サブリーダーから代表者を選出、新しい派を設立して貰う事になります」
新情報に声が漏れる。
濃艶派講習室では『わたし、わたし!』と自分を指差し自己アピールする三人を一般人員は引き気味で見ていた
「現在濃艶派は投票の真っ最中です。代表者が決まるまではこうですさんも濃艶派の人員ですので投票をお願いします」
「……はい」
話が終わり派長室を出るれいりとるうりん。
れいりはマルー内の騒ぎに戸惑っている
「…私がいざない捕まえに躍起になってる間こんな事が起きてたなんて……」
「リーダーあっての濃艶派でしたし仕方ない事だと思います」
途中、るうりんと別れ一人講習室へと歩いて行った
(私が特別幹部になるって事は、皆と会うのも少なくなるんだ……何か寂しいな…)
自分の状況も変わる事に眉が下がりしんみりしている


「あれ、人あまりいない…」
「れいり!」
講習室にはサブリーダーは帰り、いるのは数人。壁のボードには『投票後は自主トレ、グラウンドへ』と書かれている。
投票箱の横にはカラリン君が不正防止の為に監視として座っていた
「イソネ」
「話は聞きました。れいりも脱けるのですね」
「うん………も?」
やって来たイソネに『?』
「実はミヨシなんですが」
「あ、やっと来たー」
「ミヨシ! ミヨシも濃艶派脱けるの?」
れいり待ちをして数度講習室を覗きに来てたミヨシが入って来る
「脱けるって言うかマルー辞めるの」
「え!?」
ミヨシは大きな鞄を背負い、片手にも荷物を持っている
「リムさんから連絡来てさ、コルチ団って事全部聞いたんだ」
晴れやかな顔のミヨシに驚く
「今は取り締まりの所で償い中だから、私はそこの相談員として行く事にしたの」

償い中のコルチ団は皆同じ服を着て色んな作業をしていた。各々明るい顔をしている

「マルーに所属してる訳にもいかないじゃん? 取り締まりに入るって訳でも無いから普通に一般人扱いなんだけど」

「それでもコルチ団の皆が更生して復帰するまで見届けるのは私にとって意味ある事だと思ってさ。自分から志願した訳♥」
「綺麗に聞こえますがイケメンが多いと言うのが一番の理由です」
「まっ そうだけど♥」
「……」
途中までは良かったがイソネの一言でれいりは苦笑い
「サブリーダーは残るけど、りっついも私と一緒行くから」
「…そうなんだ」

〈ミヨシ! れいりいた?〉
〈うん〉

大荷物を持ったりっついもやって来る
「落ち着いたら連絡するね! 次会ったら遊ぼうね―――」
『じゃーねー』とミヨシとりっついは手を振り去って行く。これからの新生活に期待を膨らませ周りが輝いていた
「…じゃ、コルチ団総帥は……」
「治療中だそうですが、回復に向かってると聞きました」
「そっか」
「“ふる りゅうせい”がコルチ団の総帥と言うのも驚きましたが、今まで貢献してきた数や経済発展に尽力した方なので、罪も半々と言う感じになる様です。富裕層から嘆願書も出ています」
イソネが入手した情報をれいりに話す
「良い方に行って欲しいですね」
「そうだね」
カラリン君の所で紙を受け取りイソネはペンを持つ
「さて、私も部屋の引っ越しがあるのですぐ投票して戻ります」
「寮って一人部屋はダメなの?」
「いえ、私は典型派に異動する事が決まったので」 典型派の部屋に
「えっ…じゃ、イソネも!?」
「はい」
ミヨシに続きイソネも脱ける事を知り驚く
「元々…濃艶派に入った理由は……………特攻隊長さんの雄姿を見たい為だったのです」
「へ?」
顔が赤くなったイソネはモジモジしながら投票用紙を折りたたむ
「あの様な男性的な美貌を放つ女性、お目にかかる事はまずありません!!」
「…たさいさんイケメンだもんなぁ……」 その辺の男子より男らしい
力説するイソネに納得
「リーダーと同行すると聞いたのでマルーではほぼ見る事が出来なくなった今、私が濃艶派にいる理由も無くなった訳で」

〈誰にしよう…〉
〈動じない方が良いと思います〉

イソネの話を聞きながら受け取った紙を見て考える。
アドバイスを元に記入していた
「引っ越しが完了次第、私は典型派に行く事になります」
「寂しくなるなぁ…」
「私はマルーにいますし、いつでも会えますよ。典型派の皆はれいりを歓迎します」
「ありがとう」
紙を箱に入れ講習室を出て行く二人
「まだ荷物あるなら手伝う?」
「そうですね。ミヨシの置いていった物で欲しいのがあれば貰っていって下さい」
「うん」
二人はそのまま女子寮へと歩いて行った

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