マルー・クインクエ【調査開始】・・・3
――マルー
「ししょーには伝えた。俺達は再びビイスの所へ行く事にする」
「よろしくお願いします」
いざない達は混ざりを捕まえた後マルーに戻り報告していた。
次の目的を告げた後それぞれ休憩する為に一旦部屋へと向かうが、ふといざないが足を止め難しそうな顔をする
「どうしたのいざない?」
「ビイスの所来んのはあと三人だ。その前にジンホウ連れてった方いいんだよなー…」
背後に近づく黒い影
「僕を必要としてくれるなんて嬉しいなぁ❤ いざない君❤❤」
ぞわっ
いざないの背中にピタリと体をくっ付ける。
急な密接にいざないの背筋が伸び硬直した
「ジン! お帰りー❤」
「ただいま戻りました♪」
「あんたじゃないっ 俺が必要なのはダイヤだダイヤ!!」
「ダイヤ君、良かったですね❤」
呼ばれてポケットから顔を覗かすダイヤ
「背中さするなっ キモイ!」
れいりは空笑いし二人を見守った
「ところで捕まえた三人は連れて行ったのですか?」
「ああ」
「そうですか。なら行きましょう」 ダイヤ君
「?」
くる~ん ヴォン!
「!!」
いざないとジンホウがその場から消えた
「ジンといざないどこか行っちゃった」
「どこ行ったんだろ…」
ダダダダ バタバタン!
数十分後、れいりは部屋で貰った資料を眺めていると、通路から大きな音がした為立ち上がる
「帰って来た…のかな?」 カチャ
「何かに怯えていた様だった」
「へ?」
ソルムを見ると奥からジンホウがやって来る
「ジンホウさん、お帰りなさい」
「ただいま」
「あの…二人はどこへ行ってたんですか?」
「三層です」
「え?」
和やかなジンホウから意外な言葉が出てちょっと驚く
「三層って…暗の?」
「ええ、どうしてもいざない君に見て貰いたい事があったので」
「……怯えてたのは何で…」
「いざない君を見知った娘たちに追い掛けられたんです」
「それで逃げ回ったんですか」 なるほど
「ええ。――で、れいり君にお願いが」
「おーい、いざなーい」
いざないはベッドで俯せになりぐったりしていた。ディックが自分のベッドに腰掛け心配している
「まだあまり練習してないもんね。ちょっとこっち来て」
「……」
寝室に入って来たれいりはいざないの腕を掴みリビングへと連れて行く
「聞いたよ、捕まえた五人に香水配った人の事聞いたんでしょ?」
「……ああ」
「その人って人相術で分かるもんなの?」
「…まぁな」
顔は青ざめ調子悪そうにしてるがれいりの問いに素直に答えている
「どんな感じの人だった?」
「……あ?…………短髪で」
「ソルム」
「御意」くる
「!」
ぽん!
いざないの目の前に肩から上の女性が現れた
「出ましたジンホウさん」
「ありがとうございます」 カチャ
「~~~~~~~」
成功した事を知ってすぐ部屋へ入って来た
「~~~てめーらぁ…」
「だっていざない君ロクスニジェルの法嫌がるし♪」
「人相術ってこんなにはっきり分かるんだ! すごい!!」
「すごーい」
「~~~~~…」
れいりとディックは感動するも当のいざないはしてやられた感が混ざり困惑。
ジンホウは現れた女性を見つめ、ある結論を出す
「…どうやら僕の思い過ごしだったかな……」
「一体こいつが何なんだよ。とんでもねぇ所まで連れて行きやがって」
しゅ~と女性は消えていく
「いえ、少々気になる香りでしたので。ありがとうございます」
腕組みし睨むいざないに詫びる素振りは無かったが礼は言っている
「この人は程で、訳あってウルビスーブテラに来たんですか?」
「ええ。五人の話ですと皆この香りが気に入り付けてると言ってました」
ジンホウが調べた女性にしても繋がりが全く分からないれいりはキョトンとしてる
「どんな香りなんだろ…」 ちょっと気になる
「興味ありますか? でしたら僕がれいり君に合った香りプレゼントしますよ♪」
「えっ! いえいえ。ただどんなかなって思っただけで」
「れいりは元々良い匂いだし、何もしなくていいと思うよ?」
「え!?」
「ディックさんが言うならそうですね」
ディックに大いに驚くれいり。
いざないは頬杖をつき呆れた感じで遠くを見ている
「しかし…少しは耐性出来たかと思ったら全然でしたね」
「…んな簡単に治るかよ!」
落ち着いて来たいざないだったが、掘り返されて再び怒り出す
「その上高台で面白がって見てやがって!!」
「えー、僕はいざない君の克服振りを見たかっただけですよ?❤」
三層では『いざない様ー❤』と呼ばれ追い掛けられてる様子をとっても楽しそうにジンホウは眺めていた
「ぬかせ!!」
「すみません。中々上手くいかなくて…」
「れいり君が気にする事では無いですよ」
後ろ頭に手を添え詫びるれいり
「んじゃ、れいりいざないにハグしたら?」
「あ、そうですね」
ばっ
「…………何で逃げんの」
いざないは即逃げし距離を取っている
「…サバ折りされてたまるかよ」
「おや、いざない君にはそんなに締め付けるんですか?」
「…どう言う訳か力がこもると言うか……」
れいり本人もよく分かってない
「僕達には普通ですが」
「そうだね。私もジンもソルムもまいちも普通にれいりハグしてたよ」
思い出すディック。
何も知らないいざないは無言でジンホウ達を見る
「……」
「――と、れいり君の特訓の時の話です。常にしてませんから」
気付いたジンホウは目を逸らし軽く流す
「気を付けてみるからおいでー、いざない」 こいこい
「ヤダね!」
じと目で手招きするれいりを拒否
「何で!」
「お前の目がサバ折りするって言ってる!!」
「今までの積み重ねでしょうか」 根深い
苦笑しながら違うやり方を考える
「では、いざない君がれいり君にハグするのはどうですか?」
「あ、それ意味無いです」
即答したれいりは前に聞いた事を思い出す
「自分から行動する分には相手が女の人でも何とも無いんです。あくまでも迫られたり追い掛けられるのがダメみたいで」
〈どっからんな情報…〉
「ほう。やはりトラウマなんですねぇ」
「と言う事でおいで~~~」
「行くか!!」
「じゃ、私ハグするー❤」
ガバッ!
「ディック!?」
ディックが嬉しそうに後ろから抱き付いた
「ディック、お前も苦しいっつーの」
「そんなつもり無いんだけどなぁ~?」
きゅううと締め付けるディックに焦り出す
「息できね……はなれ…」 おえっ
「いざない君をきつく締め付けたくなる何かが明にはあるのでしょうか」
穏やかに微笑み理由を考える
「……人形なのだろう」
はっ
ソルムの言葉にディックとれいりが目を丸くした
「うん! そうだよ、だから私も力入るんだ!! いざないかわいいんだ。あは❤」
「ぬいぐるみと全然違うだろっ 何でだ!!」
きゅ~~~~
「ディッ……やめ…」
納得すると尚力が入っていく
「……やっぱりいざないってぬいぐるみ…」
「違う!!~~…」
くすくす
「笑うな――!!」
口元を抑え笑い続けるジンホウ
「…だが、以前のプリセプスはいざないに普通に接していた」
「…そうなんだけど」 うーん…
「距離が縮まったんでしょう」
「ぬいぐるみがLvアップしたんだ!」 なるほど
「何でだ!!」
謎が解けたれいりに衝撃が走る
「ですが困りましたねぇ。れいり君のハグから逃げるとなるとリハビリなりませんし、又違う方法考えないと」 あーおかしい
「そうですね」
れいりは腕を重ね困ってしまう
「………」 じー
周りに❤が飛び交い青ざめたいざないにしっかり絡まるディック達をジンホウは見続けた
「イノシムさんいつ頃戻るのでしょう」
ぎょっ!
「止めろ!! それだけは止めろ!!!」
「え? 僕まだ何も言ってないですよ?」
「イノシムからあれ借りてディックに付けさせてとかろくでもねー事考えてんだろ!!!」
「おや、これは見事。侮れませんね人相術♪」
「~~~~~~」
からかい口調にキリキリ
「あれって…動物なったり性別変わったりする腕輪ですか?」
イノシム関連でフォートゥスへ向かう時の遊びを思い出す
「ええ。混乱療法って意外と効果あるかなーと。それでれいり君大分克服しましたし❤」
「そうでした!」
「いざない君いない間れいり君頑張ったんですよ」
「うん! れいりがんばった!」
「……」
二人に褒められ照れるれいり。
内容が何となくわかるいざないは知らなかっただけに沈黙してしまう
「うん! いーよ。あの腕輪付けていざないにハグする❤」
「ディッ…!!」
「ディックさんかわいいですし、問題無いですね」
「大ありだろ!」
「そうだ、まいちさんも協力を仰ってみましょう」
「~~~!!! さんぼーちょー巻き込むな!!!」
〈え〉
まいちの名にれいりが反応
「意外とまいちさんノリ良いですよ」
「ノリとかの問題じゃねー!!」
「……まいちさんが性別変わったら…すっごい美人だろうな…」
ゴクリと唾を飲み妄想に思いを馳せる
「きっとソルムの妹さんに瓜二つ」
「そのまま妹だろう」
「……」
れいりとソルムの会話に耳を傾けるいざない
「あの半ら男のイメージ通りになりそう」
「そうだな」
「興味ありそうですね」
「――っ! ねえ!!」
「一緒にソルムさんにもなって貰うのもありですね♪」
「!!!」
〈え!?〉
ジンホウの提案にれいりは目が点
「ま、これはれいり君次第ですが」
思考が停止しかけたが、顔だけをソルムに向けるとわずかに期待するれいりだったりする
(ソルムの)
(性別が変わる―――…)
れいりに倣い他の三人もソルムを見ていた
「ソルムが女の子だったらとっても綺麗だね❤」 あの時は男の子だったし
「ソ…ソルムは抵抗あるよね……ムリにとは…」
本当はすっごく見たそうなれいりだが、両手を前に出し慌てている
「ない。プリセプスが望むならそれに従う」
「!」
「後世まで語り継がれる女性達が出来そうです」
大真面目に言い切るソルムにれいりはあんぐり
「さてどうします? いざない君。皆さん協力して下さるそうですが」
振り返ったジンホウにいざないの体が強張る
「れいり君の力強い抱擁で良いと言うなら今の案は帳消しにしますよ」
裏のありそうな薄い笑みを浮かべるジンホウにいざないの体は危険信号を発していた
「い・ざ・な・い・君♪」
「……………」
ぎゅ―――
「いて――――!!」
結局、いざないはサバ折りで譲歩したとさ
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