マルー・クインクエ【地下都市への道】・・・1

三時間半前

「どこにあるのかのぉ❤」
一丁はくんくんと鼻を鳴らしどんどん奥へ進んでいく
(あの程はどこまで行くんだ?)
進む事を止めない一丁にゴロンはやきもき
(何度ここは!?)
いつの間にか草が消え洞窟内へと入っていた。
その先には入口が沢山あり、一丁は迷う事なく一つの入口へ歩いて行く

たたっ

見失うまいとゴロンも追い掛けた

スッ
「!」

ゴロンの目の前が暗転

「わ―――!」
ゴロンゴロンゴロンゴロンゴロン

そのまま真下へ転がっていった


ざわっ
「ぬ?」

おびただしいどよめきに一丁は瞑っていた目を開く。
目の前には大勢の人が不審な目で一丁を見つめていた
「どこかの村に行き着いた様だ。スマヌ、良き匂いに引き込まれての、この匂いがする花を数本貰えぬか?」
「…え?」
すぐ近くにいた住人に笑顔で話すも住人は言葉を詰まらせ戸惑っている
「良き匂いってこの匂い?」
芳香が強くなり振り向くと一人の女が立っていた
「そうだ! その匂い❤」
「連れてってあげる。こっちよ❤」
ボブスタイルで軽装の女は和やかに一丁に腕を絡ませ歩き始める
「何と言う美しき女性❤ 名を聞いても良いか?」
「あら、私はガウン。よろしくね」
一丁はガウンに心を奪われると周りにハートが飛び交った
「そうか、ガウンか❤ そうかそうか」
建物に入っていく二人を見送った住人は胸をなでおろしほっとしている


どてっ

寛ぐ三帝柱の部屋に大きな音がした
「イタタ…頭を打ってしまった」
やっと動きが止まったゴロンは後頭部を両手で押さえ痛がっている

はっ
「あ…えーと、すみません」

驚いてゴロンを見下ろす三帝柱
「邪魔するつもりは……すぐ出て行きます、出口はどこですか」
「もしやあなたは私達と同じ血を…!!」
「え……………」
平謝りするゴロンは改まって目の前の三人を見た
「……お前達混ざりか、分かってるなら仕方ないがおれは混ざりで無い、暗だ。程の血は入ってないぞ」
立ち竦む三帝柱に言い訳する
「ん?」
(おかしくないか、何故こんな場所に暗の混ざりが?)
言った後ありえない事に気付く
※ゴロンは話を全く聞いてないので知らない
(二層三層から逃げた奴等か?)

ざっ

「?」
三帝柱はゴロンの前に跪きお辞儀
「我が偉大なる父“パーテ”と同じ血!!」
「……」
「父は我らに“王”を託して下さった」
「我らが王よ!! ウルビスーブテラに来た事を歓迎します!!」
ゴロンは目が点

「王?」

         *

「沼の水が流れてますね」 水路ですか
「これくらいなら影響少ないし」
「…ししょー気付かなかったのか……」
洞窟内を歩く一行は毒沼の水が流れる水路に沿って奥へと進む
「ひぃ!! 蛇!?」
伸び~と伸びてる蛇を見つけたれいりは急いで後退した

ガッ

「珍しい蛇だし、新種かもしんねぇぞ」
カシャ カシャ

「興味深いですね」
「……」←れ
「置いてくぞそこ!!」
首元を携帯の棒で掴み観察するいさいとジンホウ

ヴーン

「ギャ――」 バッ

後方からの羽音に驚きれいりはしゃがんだ

バッ キャッチ

捕虫網で捕獲しマジマジと見る
「ここにしかいない虫だし!」

ヴーン ヴーン

「ほう」
「…………」
いざないは静かに睨む。
れいりは鼓動が早くビクついていた
「面白い生き物多いし!! すごいぞ!」
目をキラキラさせ少年の様に虫を見るいさいの背後から人影が
「冷静に考えて今優先にすんのはどっちだ?」 ゲシ
「………探す方だし」
「そうでした」
リュックごと足蹴にされたいさいは前に突っ伏す。
気を取り直し一行は歩き出した

「で、ジンホウ。あんたの言ってた香水って一体何なんだ?」

前から耳に挟んでいたジンホウの言う“香水”が気になり聞いてみる
「アスイ教授は覚えてますか?」
「ああ、双子の父親だろ」
(てく君ととく君のお父さん…)
「その教授が作った香水なんですが――…本来は少し酔わす程度の普通の香水でした」
双子と言う言葉にれいりは例の写真を思い出す
「それがディレイの手に渡りゲレフによって改良され、頭をマヒさせ洗脳させてしまう程の代物になったのです」
「…くるまさんが操られてた奴か……」
思い当たる節があったいざないは当惑する
「まあ、明暗や混ざりは効き目無いので問題無いのですが、個人差はありますがほとんどの程は操り人形同然になります」
「ディレイって奴は捕まったんじゃ無いのか?」
「ええ。ですのでこの前収容所に行き、三層ではいざない君にも確認して貰ったんですけどね」
「………」
三層に連れて行かれた件を思い出し総毛だつ
「確かにディレイは収容所にいて、香水の所有者は別人でした」
れいりは二人の会話に驚き聞き入っている
「でも嗅いだ事のある僕は違う香水だとは思えなかったので、気になってたのです」
「何らかのルートであの女が手に入れたんじゃね?」
「――まあ現時点ではそう考えるのが普通ですね」
「ゲレフもあそこまで歪まなけりゃ良い研究者だったし…」
やり切れない思いでいさいは溜息
「知ってんのか」
「同期だったし」
「程の研究所では、まだ博士の大赤字を塗り越える者は出てないそうですよ♪」 ジエヌが言ってました
「それ言うなし」
話の流れでいさいの昔話を語るジンホウにいさいは汗
「…何やらかしたんだあんた」
「研究施設三棟吹っ飛ばしました」
「………」
「あそこまでなるとは思ってなかったし」
いさいの黒歴史にいざない唖然
「誰もいなかったのが幸いでしたね」
「休み狙ってこっそり実験してたんだ」
穏やかに会話する二人だが内容の大きさにれいりは苦笑する

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