マルー・クインクエ【地下都市への道】・・・2

一行は通路とは違う空間に到着すると眼前を見つめ立ち止まった
「これまた多いですね」
目の前には整然と並んだ沢山の入口と、端っこには山積みされた小石がある
「プリセプス、入口は何個見える?」
「……八個だよ?」
ソルムに言われ素直に数える
「だそうです」 皆同じです
「ししょーは…」
訳が分からずポカンとしてるれいりをほっとき、いざないは一丁の姿を探す為顎に手を添え大真面目に入口八つを見続けた
「ここだ!」
いざないが進むと皆も後を追う

フッ

入口に入ると一瞬中が暗転し、先頭にいたいざないが止まる
「……? どうしたのいざない」 進まないの?
「……」
「……やられた」 みえねぇ
「?」
当然気付いたジンホウも無言で前を見ている
「巧妙ですねぇ。入口は統一し、侵入してから道が変わる罠ですか」
「ええ!?」
「後戻りも出来ねぇし進むしかねえな…」
後ろを見ても入った入口は無い。気を取り直し、いざないは警戒しながら先へ足を進める


最後尾にいたれいりはふと、壁側が気になり寄って行く
「プリセプス?」
「これ何だろ?」 赤い実の様な
躊躇う事無く人差し指で触るとプチと音がした

ガコン

左右天井から無数の穴

ヒュンヒュンヒュンヒュン キン!

穴から鋭利な棒が次々一行に襲い掛かった
「終わったか」
棒の出現が止まりソルムは結界を解く。
れいりは一瞬の出来事に押した指もそのままで硬直
「……めぇ」

ぎく

「明の遊びと違ってここは本気で殺しに掛かってくんだ、その辺の物闇雲に触んじゃねえ!!!」
「……ごめんなさい」
鬼怒のいざないが拳を作りれいりを威嚇
「ったく!!」
「ソルムさんがいて助かりました」
「嬢ちゃん俺より危険だし…」
怒りが止まぬいざないとれいりを唖然として見るいさい。れいりは冷や汗だくだくで挙動不審になっている


「ここは狭いし」 ゴッ

狭い道に入り体を曲げるが、でかリュックが何かとぶつかった

シャッ
「!!」 ばっ

いざないのいる場所に両脇から鋭い刃が串刺しに挟み込む。
いざないは素早く避け難を逃れた

ガチャン!

「…………」←いさ・いざ
どう見てもリュックがぶつかった物はスイッチ。
二人、無言で固まる
「てめ~~~~らあ~~~~~~」

びくっ←れ

「今のは事故だっ 何とも無くて良かったなっ いざない!!」 ワ…ワハハッ
さっきよりも恐ろしい怒り顔にれいりは二・三歩下がる
「そいつ燃やしてやる!!」
「まっ 待つし!!」
「今回ばかりはディックさんが同行してなくて良かったと思います」
でかリュックに掴みかかるいざないと取り上げられまいと頑張るいさい。
ジンホウは困り笑いしながら仕掛けは全部試す人、ディックのほんわか笑顔を思い出していた
「…鎖、プリセプスがここ一帯の物を触らぬ様見ててくれ」
『ハーイ』
鎖が数十個れいりの頭に飛んできた
「ゴメンね鎖。私も気を付けるから」
『いーよー』
『触りそうになったら引っ張るねー』
すまなそうに上を見るれいりに鎖は快く返事し、れいりの髪の一部をとぐろ巻きまげにして落ち着いた
「鎖君いると安心ですね」
「はいっ」
でかリュックを死守したいさい。
いざないはリュックよりもれいりの頭に目が行ってしまう
「…………くく……」
「ムキ!!」
見た目の面白さに前を向いて笑いだす。
自分の事と気付いたれいりは目が吊り上がった
「…うちのプリセプは喜怒哀楽が激しいです」 怒ってたと思ったら
「プリセプ言うな!!」
ジンホウはいざないの変わり身の早さに苦笑する


「…何だここ」
一行は随分広い空間へと到着

ヴォン

地面の各所にサークルが現れると、何体ものマモノが姿を現した
「暗のマモノか」
「ひいっ」
無表情で呟くソルム。れいりは目が白くなり悲鳴、上にいた鎖の目付きがギラと変わる
「ここの一族は召喚にも長けてるんですか」
「暗で見た顔も何体かいるし」
空間にいるマモノの数を数えるジンホウ。
いさいは腰が引け後退り

バッ

『え?』
いざ五人の元へ行かんと動き出すマモノの周りに、空間一面に広がる法陣が出現しマモノがきょどった

『え~~~?』

黒い靄に吸い込まれていくマモノ群

トフ ルオオオオオ

「雑魚に用はねえ!」
いざないの法で呆気なく暗の地へ還された
「お見事」 パチパチ
「嫌々でも覚えてて良かったなそれ」
「ほっとけ!」
いさいの余計な一言にムッとする
「んで、いなくなったの良いが道無いぞ」
「プリセプス、何か入口の様な物はあるか?」
「…? 無いよ」
いざない、ジンホウ、いさいはマモノがいた場所へ歩き出し辺りを探し始める。れいりも皆の後を追う為足を進めかけた

ピン
「……………鎖?」

れいりの頭にいた鎖がソルムと絡まりれいりの動きを止めている

パカ
「!?」

いざない達がいた場所の地面が消えた
「落とし穴だし――」

ひゅん

「ええ!?」
『プリプリだめ!』
落ちて行く三人に手を伸ばそうとしたれいりは尚鎖に引っ張られた

フッ

「……」
大きな穴が元に戻る
「……どうしよう…皆落ちた…」
「鎖は行くなと言っている。追わぬ方が良いだろう」
『うん!』
膝を付き、戻った地面を呆然として眺めている
「でも…ここ入口無いし……」
再度空間を見回すと見覚えの無い物が目に入って来た
「…あれ? さっきまで無かったのに入口ある……」
「…誰かが落ちると現れる仕掛けかもしれぬ」
右方向にぽつんと出現した入口
「…じゃ、ひとまず行ってみよっか」
「御意」
残ったれいりとソルムは現れた入口に進入し歩いて行く

         *

――小若の部屋

大量の食べ物に囲まれ食事に勤しむ小若の動きが止まる
「ウェル! ハナエン!!」
小若は急いで二人の元へ走り込む

         *

「びっくりしたし」
「…はぐれたか」
「まあソルムさんいるし、大丈夫でしょう」
落下に対する抵抗力が無いいさいはリュックをクッションにしてケガも無く着地していた。
どの場面でも頼りになるソルムがれいりといる事に取りあえず安心し、三人は立ち上がる
「また同じような道です」
「蟻の巣だなこりゃ」
見栄えの無い洞窟内を見回す
「道の途中だし、前と後ろどっち行」
いさいは前後を見て一歩進む

パカ
「また落ちるのか―――!?」 ひゅん

「おい!」
いさいが踏んだ場所に罠があり落ちて行く。
ジンホウは咄嗟に手元を動かした

パカ
「俺もだとお!?」 ひゅん

いさいの元へ行きかけるも別穴が開きいざないも落ちて行く
「……」
ジンホウが二人が落ちて行く様子を見てるしか無かった
「孤立しましたか」
元の地面に戻った場所を眺めている
「――ま、進みましょう」

一人、ジンホウは洞窟の奥へと歩き出した

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