マルー・クインクエ【辿り着いた先】・・・1

――王の部屋

天蓋付きの豪華なベッドに周りの家具も高級品で埋め尽くされ、地下であるにも関わらずキラキラと眩い光を放っている
(あの混ざり共、おれを王にしてどうする気だ?)
ゴロンは三帝柱からこの部屋に連れて来られると、暫くその場で突っ立っていた
「ま…まあ、王になる資質はおれにはあるにはあるが…」 うんうん
王と言われ気分を良くしたゴロンは照れながら何度も何度も頷いている

だん!!

ベッドの奥から大きな音

「何だここは」

着地したいざないが辺りを見回す
「部屋か」
何事かと見に来たゴロンが我が目を疑い仰け反った
(ヴェレティクス!?)
「ん?」
目が合う二人。
ゴロンは愛しの人が目の前にいる事に挙動不審に陥ったが、改めて見直すと違和感を覚える
(……違う! ヴェレティクスの息子だ!! あの程が見せた画像紙の!!)
「……」
いざないは立ち上がるとゴロンを探る様にじっと見つめている
「あいつの連れってあんたか」
「え?」 びく
「すから いさい、でかいリュック背負った奴」
ゴロンは問われて驚くも両手を胸に当ておずおずと近づいていく
「そ…そうなんですっ こんな所まで迷い込んでしまって…心配されてましたか?」
(怪しまれてはいけない! 今は穏便に穏便に…)
「……そこそこに」
じーっと見ていたいざないは大体把握すると、再び辺りを見回した
「ところでここは何の部屋なんだ?」
「それが…お…私にもよく……三人の女に『王』と言われて連れて来られて…」
「ふーん」
軽く返事しいざないは観察しながら歩き出す
(…それにしても) ちら
ゴロンはいざないを気付かれない様目で追った
(見れば見るほどヴェレティクスに似ている!)
想い人といざないを重ね合わせ顔が赤くなっていく
(王としてヴェレティクスの息子とここに住むのも悪くないかもしれない) キャ❤

(意外とキモイなこいつ…) ぞわ

一人恥ずかしがるゴロンを背に受け、いざないは身震い


「王! 失礼します」

三帝柱の声にいざないは急いでベッドの陰に隠れた
「お部屋は気に入りましたか?」
「あ…ま…まあ」
「さて王は何人必要になります?」
「?」
かしずく三帝柱の言葉に訳が分からないゴロン。
三帝柱の号令と共に後ろからわんさか女がやって来た
「皆、粒揃いばかりです」
「うわー、この人が王?」
「よろしくお願いです」
ゴロンを前に女達は陽気に笑う
「さあ、お選び下さい」

「!?」

「……選べって……まさか…」
「はい❤」
何となく理解したゴロンは固まり怖気づく
「我が偉大なる父“パーテ”と同じ血を持つあなたがいれば我が一族の繁栄は間違いなし!」
「この地にいる程よりも、まずはあなた様を優先にさせて頂きます」

「…」
様子を窺っていたいざないは唖然

「さあ❤」
嬉々する三帝柱に促され女達およそ十人がゴロンの元へ寄って行く

(冗ー談じゃない!)

ゴロンは汗だくで近づく女達に距離を取り一歩一歩後退

(軍人の出であるこのおれが、どこの血ともわからぬ女を娶るなんて出来るかあ―――!!!)

声に出したい悲痛な叫びがゴロンの中で鳴り響く
「まだ王が緊張している様だね」
「あなた達、王をほぐしてあげなさい」
「はーい」
「!!」
三帝柱は女達にゴロンを任せて出て行った
「~~~まっ 待て」
後が無くなり焦ったゴロン
「腹…腹が空いた、まず何か食べないか?」
「分かりました!」
「お酌します!」
苦し紛れに言った言葉を素直に聞き入れ、女達は食事の用意を始める

わいわいわいわいわい

危機的状況から抜け出した訳で無いゴロンは全身硬直しながらお酌されていた
(ふーん…)
いざないはバッグからメモを取り出し文字を書くと気付かれない様ゴロンに見せる

ぱっ
[こいつら何人いるか聞いてくれ]

メモに気付いたゴロン
「そうだ! 聞くがここにお前達の様な者は何人いる?」
(ここはヴェレティクスの息子に頼るしか無い)
ゴロンは必死にメモの内容を話し出す

カキカキ
「……」
その間いざないは次の質問を考えメモに書く

「パーテの血は五十二人」

(二人多いじゃねーか…)
多くなった事にびっくり

「外に住めなくなってこっち来た程は二百人くらいかな?」
「でもパーテの血五人減ってるね、まだ帰って来ない」
「外楽しいのかな?」
「そう言えばウェルは?」
「小若の相手が忙しいんだよ」
「…」
先頭にいる女達の会話にさっぱり分からないゴロン

ぱっ

「……ここから外へ出る入口は何箇所ある?」
「全部で三つ!」

(三つか)
新情報に聞き耳を立てる

「毒沼でしょ、猛獣でしょ、棘山の三箇所」
「棘山は程の出入りが多いんだ! ぬうが頻繁に使ってる」
「ぬうはね、変化と程の子でパーテの血は無いけど」
「ぬうの父とうちらの父が同じだしっ バロって言うの」
「……」

〈私も父バロ〉
〈私もバロ〉

あははと笑いわいわい盛り上がる。ゴロンは無言

(…種牛か)
いざないちょっと引いている

フッ

〈ん?〉
いざないの目の前に二体のダイヤが現れた
「…お前らいたのか」

         *

「広い所ですね」
ジンホウはその後罠に掛かる事も無く、ある場所へと行き着いた。
中央には大きな噴水が設置され、周りは居住スペースがある。噴水の周りにはちらほらと人の姿もあった

「あんたもさっき来たの?」

歩く人が混ざりで無い事を知り、中央へ歩き出すが声を掛けられ立ち止まる
「じゃ、まだ儀式してないんだ」
「儀式?」
一枚の布をワンピースにして着こなす軽い感じの女が現れた
「ここに来る者は“男”だけ三帝柱の儀式を受けるんだ。三帝柱は朝見回り来るからその間あたいが案内してあげる❤」
女からふわっと仄かに香りが漂う
「素敵な香りですね」
「これ? ついこの間一員になったリトル・ガウンが持ってるんだ」
香水を付けた箇所を手でなぞり女は照れる
「その女性は…女性ですよね」
「うん❤」
「その人はどちらに?」
「あの大きな建物にいる」
居住スペースで一際大きく目立つ建物を指差す女
「あんたより前に来た男を連れて儀式の下準備中、だから準備が終わるまで一緒に」

「え?」

振り向くといた場所にジンホウがいない
「うそー、消えた―。他の女に取られる~~」 好みだったのに~
ショックを受けた女はその場で嘆いていた

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