マルー・クインクエ【辿り着いた先】・・・2

「あれ?」
れいり達は明るくなった場所に来ると既視感を覚えた
「最初の入口に出た…八つの入口…」
出てきた入口を見直し立ち竦む

「嬢ちゃん、無事だったか」

「博士! 良かった……ジンホウさんといざないは?」
端の方でしゃがんでたいさいに気付き安心するも一人だけいた事に疑問
「それが俺だけまた別に落とされて違う場所行ったし」
「え!?」
いさいもはぐれていた事に驚く
「俺が落ちた場所はいやー面白かった! こんなに大量に珍しいのいたし」 ホレ
「!!」
いさいが指差す場所には山の様に積まれた袋の中に数千以上の虫が蠢き、耳を澄ますと足を動かすガサガサ音が鳴り響く
「こいつらは後で持ってくとして」
虫をお披露目後、入口間際でポイと石を中に投げ始めた
「~~~~~~……何をしてるんですか…?」
虫の山にギョッとし硬直したままいさいの行動が気になり尋ねている
「端っこに山積みなった石見つけたし。俺の予想だと地下の奴らもここ通るんならこうやって石投げて確認してから行ってるんだと思ってな」
確認を終え隣の入口へ行くと再びしゃがんで石を投げる
「嬢ちゃんはどこからここ来たんだし?」
「皆が落ちた後、入口が現れてそこ行きました」
「じゃ、あの広間に行く道だな」パシャ
れいり達が出てきた入口で何かを操作
「今度は又何をしてるんですか?」 シャッター音?
「マッピングだ。この眼鏡に記憶させて内部の違いを見てるんだし」 他の場所もやってたし
「へえ~」 さすが
「嬢ちゃんが出てきた入口で大体分かったぞ」
ゴーグル型眼鏡の説明をしながら又ポイと石を投げる
「どうやら右から左に移動してるみたいだ。残った入口五個はどれか当たりがある筈だ」
最初に入った入口、いさいとれいり達が出てきた入口を辿り、見当が付いたいさいは立ち上がる
「どうする嬢ちゃん、行ってみるか?」
「…」
れいりは一瞬躊躇したが意を決す
「分かりました! 行きます!!」
「どれか選ぶし、俺も行くぞ」
いさいは残った入口を指差す
「じゃあ博士にも鎖…って大丈夫かな?」 また落ちると大変
「分からぬ」
れいりの声に歩きかけたいさいが止まった
「暗の生物か」
「そうだ」
「そいつらの好きな物って何だし?」 落ちるときついし
いさいはでかリュックを地面に置き中を漁り出す
「鎖は土と水以外何でも食す」
「ホレ、どんだけ食うか知らんが食うし」
「……重くないんですか博士…」
れいり達の目の前に大き目の果物六個が並ぶ
「鎖、女帝の伴侶がお前達にやるそうだ。食せ」

『えっ?』
『いいの?』

「いさいでいいし」
凝り固まったソルムの言い回しに汗。
お許しが出た鎖は総出で果物に集まった

『わーい』
しゃくしゃくしゃくしゃくしゃくしゃく

「食いっぷりいいし♪」 ワハハ
(相変わらず何故怖い顔?)
豪快な食べ方に喜ぶいさい。れいりはやはり鎖の目付きが気になっている

『ごちそーさまー』

「悪いな。ここの中だけでいいから力貸してくれないか?」
食べ終わった鎖に笑顔で交渉に入る

『いーよー』 しゃっ
十五~六の鎖がいさいの手首に絡まった

「おっ 手首か、ありがとな」
手首にいる鎖を微笑ましく眺めている
「こいつらかわいいな!」 ワハハ

『ほんと?』
『ありがとー』
『いい人だね』
『うん』

(良かった…)
いさいとの相性が悪くなかった事にれいりは一安心。
いさいは手名付け上手らしい
「決まったか、嬢ちゃん」
「はい! じゃ、ここで…」
一つの入口を指差し、いさいを先頭にれいり達は入って行った

         *

――王の部屋

「……何だそれ」
ダイヤが黒くて丸い物をいざないに見せる
「耳栓か?」
そのまま耳の所に持って行くとセットした
『いざない君、聞こえますか?』
「!」
二体のダイヤは『普通に喋って良い』と言う目でいざないを見ている
「今どこにいる?」 ヒソ
口を手で覆い、部屋の女達に気付かれない様話し出す
「程の居住区にいます。どうやら一丁さんはここに辿り着いた様です」
『!』
ジンホウはセットした耳栓の場所を手で押さえ、人目の届かない岩陰から辺りの様子を窺っている
『ししょーは無事か!?』
「うーん、建物内部で“儀式準備”とやらをしてるらしく確認は出来ないですね」
『!!』
建物を見るが何の動きも感じ取れない
「…間に合わなかったのか……」 ししょー二世がわんさか…!?
想像を超える壮絶さにいざないが震え上がる
『“準備”ですのでまだ望みはあるかもしれません』

『ところで、ダイヤ君にお願いしてこっそり地下都市の歩いた場所の通りを良くして貰ったので、連絡機が稼働すると思います』
「まじか!」
いざないは急いでバッグから機器を取り出した
『いざない君はどちらです?』
「混ざり共の中だ。色々情報集めしてる」
『おや、種馬にされない様気を付けて下さい』
「今は違う種馬いるし問題ねえ」
『?』
ゴロンが次のメモはまだかとチラチラベッド側に目を配っていた


猛獣区域では夥しい数の獣の相手をしてる典型派とただお達がいた。皆倒すと言うよりは軽く避け相手にせず受け流している

ピピピピ

「副団長!!」
連絡してきた相手にただおは大声を出し驚く


(とにかく、色々聞き出して上に準備させねえと!)
連絡し終えたいざないは次のメモを書きゴロンに見せる


「さて、僕はもう少し様子見ますか」
耳栓の通信を切るとジンホウも次の行動に取り掛かった
「ダイヤ君、お手伝い感謝します。この件が終わったら食べ行きましょうね♪」
パアアアァ
ジンホウの提案に三体のダイヤが目を輝かせた


キャッキャッキャッ わいわい
「ん?」
王の部屋では連絡が来て確認しようと手元を見るとダイヤの雰囲気が違う事に気付く
「…………良かったな」
小刻みに動き嬉しくて震えるダイヤがそこにいた

         *

約一時間後
「もーお腹いっぱい❤」
「さっ 王、はっじめましょー❤」
「え…」
次の手が無くなり硬直するゴロン
〈最初私ー〉
「あの……」
順番を決める女達を前に体が縮こまり後退するとメモが目に入って来る

[とりあえずやれ。怪しまれないように]

ぎょっ
(できるかぁ―――!!)
ゴロン仰天。いざないは見る気満々である


キャ―――
「セリヌルが魔性を連れてきた―――!!」

突如奥から聞こえた声に女達の動きが止まる
「えっ 魔性!?」だっ
「本当にいるの!!?」だだっ
「絵画みたいな男!? どこどこお――!!!」だだだだだだっ
部屋にいた女達は『見たいー!!』と言いながら全員部屋から出て行った

(助かった…) ほ…
緊張が解け肩を下ろすゴロン

(…絵画?…………………!!)
顔を出すいざないが女達の言葉を復唱
「――って、嘘だろっ どっちだ!!」
「……どこへ!?」
気付いたいざないが慌てて駆け出した

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