マルー・クインクエ【破滅の一歩】・・・1

「……」
三帝柱は目の前で横になる人物を口を引き締め食い入る様にガン見
「セリヌル! 忘れたの!? 我が父は『魔性は破滅をもたらす』と言ってた事を!!」
「で…でも」
「いい事!! まだ眠ってるうちに外に連れてお行き!!」
柔らかなベッドに横たわる麗しき王子(まいち)。
眠りから目を覚ます勇者を今か今かと待ち望む様にじっと目を瞑ったままだ
「でも…勿体無い…」

〈うわ~~~~~〉
噂を聞き駆け付けた女達はまいちを見るとこぞって感嘆

「それが惑わされてる証拠よ!!」
超一級掘り出し物に諦めきれないセリヌル
「お前が出来ないなら私共が置いてくる!!」
「えー、三帝柱置いてくるの!?」
他の女達からブーイング

(さんぼーちょー!!?)
追って来たいざないが奥にいたまいちを見てギョッとした

「だまらっしゃい!!」
騒ぐ女達を制し三帝柱はまいちに近づく
「待って三帝柱!!」

〈さわりたーい〉
〈同じく!〉

「その手をお離し!!」
女達は腕や裾を掴み三帝柱を止めようと必死だ

だん!

「!!」
まいちと三帝柱の間にフワフワの塊が落下してきた。
急な出来事に三帝柱も女達も目点

「何者!!?」

(は!?)
ありえない状況にいざないも目を疑う

「まいちさんは、私が」
ゆらぁ~~~~~

「守る!!」

上体を起こし、のそ~と立つれいりにビクついた三帝柱達は一歩下がる
「明らかに違うこの女…」
「もしや明!?」
「まさか! 明はもっと間の抜けた……こんなマモノみたいな明見た事ない!!」
悪口めいた言葉にれいりはピクと反応した

フワ

「!?」
遅れて降りてきたソルムといさい。
三帝柱達はソルムを見ると目が飛び出るほど驚いた
「魔性+偉大なる父パーテと同じ血!!?」
フワフワとリュックを抱えて降りて来たいさいは皆に見えてはいたが、隠れる様にソルムとリュックの陰にいる。
部屋内は驚きの連続で大混乱に陥った

キャーキャーキャー ワーワー

「滅茶苦茶すぎんだろ…」
(何だ、あの暗は…)
後ろで窺ういざないは顔面蒼白。
付いて来たゴロンも顔を覗かせるとソルムを知らなかったか『?』顔
「…魔性でも父と同じ血なら話は別」
三帝柱の一人マーニャが口端を上げると、他の二人アウクトリタティスとインペリウムも大きく頷く

「一切攻撃!」
「ソーミウム!」バッ
「スランベイ!!」バッ
号令が掛かると女達は法をれいり達に浴びせた

キン! スカッ
「!!」

ソルムの結界が法を防ぎ、軽くいなされる
「眠りの法か。張らずともプリセプスと私は問題無いだろうが、いさいがいた」
「…助かったし」
法が切れた頃結界を解除する。法の類は普通に掛かる為ソルムの機転にいさいは安堵した
「プリセプスは……まだ戻らぬか」
れいりを気にするソルムは鎖を装着してない事もあり、伏せがちの瞳と時折さらさら靡く髪に一層美しさが映え、魅入った女達が頬を染めうっとりとしていた

はっ
「怯むな!!」
「何としてもその暗を手に入れるのよ!!」
虜にされてた三帝柱が我に返る

狂戦士れいりの耳がピクと動く

(まいちさんの他に)

「第二!」
「ソーミウム」バッ
「スランベイ!!」バッ

(ソルムもだと!?)
第二弾が三人を襲う
(させん!!!)

「イリジペラス」
ボッ!

「!!!」
法が届く前にいつの間にか装備を袋に収め放り投げ、又いつの間にか法を出すれいりの火で相殺された

「……一つ一つがでかくねぇか…」
頭一個分の無数の火の塊がれいりの周りを埋め尽くす。
今まで見た火の中でだんとつに大きい事にいざないは身が竦んだ

ドッゴォ

「ひっ!!」
「何このマモノ、怖い!!」
火炎放射並みの塊が壁に激突
「何してるの!! 早く放て!!」
さらに次々と塊が激突し、女達は避けるので一杯一杯になっている

ひゅんひゅんひゅん ドゴォ ドカドカ

「一旦引いて! 熱いよ!!」
「いやー!」
部屋にいる事が出来ずに外に飛び出してきた

コロコロコロ ガチガチガチ!

「え!?」
煙漂う視界不充分の中、体が固定され身動き出来なくなった事に女達は驚く
「大方集まってるし、ここで捕まえるか」
「~~~!!」
前もって準備しておいた捕縛する異物を転がし、いざないは出て来た順に拘束し出した
「王の隣に魔性がもう一人!!?」
「ええ!?」
「あ?」
まだ部屋にいた女達が一斉にいざないを凝視
「いざない! ゴロン! ここにいたのか!!」
いさいもいざない達を見て驚いた
「その男は我らと同じ混ざり!! 先に王とそいつをやれ!!」
「はい!」
「ソーミウム」 バッ
「スランベイ」 バッ
気付いたアウクが標的をいざない達に変えると法が放たれた

ガチガチガチ
「ええ!!?」

何故か捕まって行く女達
「何故効かないの!?」
いざないはしれっとした顔でどんどん異物を転がしている
「そういやその法お前使えんだな。自分でも忘れるくらい使えねぇって言ってたし」
「何言ってんだそこ!!」
ネタばらしするいさいに怒る。
聞こえてた三帝柱はギョッとなった
「ジェロ! 力ずくで行け!!」
「はーい」
半分混ざりのジェロは大喜びで走って行く
「寝てんのかよあんた!」
横で爆睡していたゴロンに気を取られ、迫って来たジェロにいざないは気付かない
「攻撃じゃねーだと!!」
「キャ――❤」
薄着のジェロと他数人が飛び掛かって来た事にいざないは青くなり硬直した

ゴッ はっ

ゴオオッ
「ひいい!」

殺気を感じいざないはすぐさま避ける。
いざないとジェロ達の間に火塊が通過した

ガチガチガチ
「あ!」

ジェロ達捕縛成功
「てめぇレオ!! 俺を狙ったな!!!」
「……ちっ」
「……………おい」
れいりはいざないを怒り目で見ながら舌打ち。
その後又部屋中に火が飛び交い出した
「いざないが避けると判断しての事だろう」
「まあ、あのままだったら気絶してたな」
ソルムの言葉にいさいは複雑な面持ちでいる
「だが嬢ちゃん、どっかで当たればいいとか思ってないか?」 ちって言ってたし
「ジンホウが言うには今までの何かが蓄積されてるからだろう」
「ああ、いざないがいじりすぎたせいか」
言われて納得。聞こえてるいざないは悲鳴と衝撃音が響く中黙々と異物を転がし捕縛していた

ドゴォ ドコォ ボトボトボトボト

聞きなれない落下音がする場所を見たいさいは、後ろの空いた壁から大量の爬虫類と虫類が落ちている事に気付く

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