マルー・クインクエ【零れた混ざり】・・・1

――三日後、マルー幹部集合室

「地下都市にいた住人は捕らえ、住居はほぼ壊滅。攫われた変化界の二名も無事村へと戻る事が出来たとの事です。進入できる場所の管理は変化界に委ねました」
分厚い資料を束ね事務的口調で夫人が話を続ける
「唯一地下都市にいたであろうてんしん家のご子息の行方が未だ分からず」
「…」
饅頭を食べ続けていたのの子が口を閉ざし厳しい顔に
「地下の住人と共に消えた可能性が高いので、引き続き捜索をお願いします」
幹部集合室には全体派幹部とのの子、他どしやとコンビ派の二人がいる
「捜索は典型派と全体派幹部でお願いします」
「任せろ」
「…べし」
「コンビ派と風切り派は進入口の警備をお願いします。場所は追って説明します」
「はーい」
「はいですと」
「それでは解散」
コンビ派、どしや、のの子が集合室から出て行った
「夫人、俺は別の場所から調べるからししょー達とは別行動で」
「分かりました」
「幻獣の森か」
「うす」
断りを入れたいざないは一丁の問いに頷いた
「一緒に逃げた奴が混ざりの場合、又来る可能性あるんだ」
「――で、同行者はこの前と同じか」
「…………うす」
探る様な疑惑の目で見つめられたいざないは腰が引く
「……またれいりちゃんと一緒に行動か…!」 ん?
「……」
「団長行きますよ!!」 はい、マスク
見かねたただおが一丁にマスクを渡し肩を掴んで連れて行く。
足は動くが、見えなくなるまで一丁の顔はずっといざないを凝視していた

カチャ
「おかちはいるか?」

「T、混ざりの方々はその後どうなりました?」
一人残ったいざないと夫人、派長の所へTが入って来る
「二層三層に監視付きで置く事になった。こちらに『来て良かった』と言う者がほとんどだったな」
「そうですか」
「…」
簡単に予想が付くいざないは汗
「牢にいるパーテにも伝えたが、自分がいないとやはりダメだと言い、刑が終わり次第再び創る旨を語った故刑が延びた」
「……正直すぎて墓穴掘ってねーか」
夫人は話を聞きながら資料を整頓し始め、分けた紙を派長に渡している
「地下の者に聞いた所、やはり一人見当たらないらしい」
「…」
「『ウェルベル』と言う1/2混ざりとその母と言う事だ。変化にいるのはその二人と変化の子で間違い無いだろう」
「1/2か…」
情報を頭に叩き込むいざない
「では、その三人に絞って捜索します。いざないさん、お願いします」
「ああ」
纏まった資料を夫人と派長が持ち、三人は派長室へ、いざないは自室へと向かった

(てかディックいねーと森行けねーし…来るまで寮行くか)
足を止め、そのまま寮へと行く

パタン

『ししょー…!!』
寮内に積み重なった物を見たいざないは感激
『あれさえなけりゃマジししょー様々なのに!!!』
早速近くの一冊を手に取ると驚いた
『おお! 二十年前の激レア!! ゾノ=ハナじゃねーか!!』 パラ
幻の一冊であった事にテンションマックス

「…」

『この人今何処にいるんだ……?』
疑問に思いながらも捲るスピードは衰えない
『うお! まじすげー!』

〈うーん〉
困った顔のジンホウがいる

『今でも充分通じるぞ!!』

「いざないくーん。お忙しい所すみませんが、ディックさん来ましたよー」 コンコンコン
『!!!』
「……」←れ
気が引けたが仕方ないと扉をノック。
寮扉外で待ってたれいりは呆れて棒立ち
「外まで聞こえてましたよ」
「……」
居心地悪そうに出て来るいざない。
すかさずジンホウは機器を使い調べ出す
「ゾノ=ハナですか。なるほど、お綺麗ですねぇ。いざない君て珍しい本だと声大きくなるんだ♪」
「ほっとけ」
画面には黒髪の美しい女性がいた
「休憩しながらお話を聞きましょうか」
「いざない! お帰り!!」
「…ああ」
客室ではディックが早速お茶タイムに入っている
「いざない間食しないから包んでおいたよ」
「…」
いざないに用意されたお菓子は包まれ、飴色のお茶だけが湯気を発し良い香りを漂わせている
「エロ本見てるくらいならお菓子作りこき使えば良かった」
「…俺の生きがいは邪魔させねーぞ!!」
腕組みし不服なれいりに反論
「まあまあ寛いで」
「……」←れ・い
二人は静かな睨み合いをしている
「それで異物の方はどうなりましたか?」
「ミング・カピトに調べて貰ったらもう故人だったって言うから異物だけ外して今の姿でずっといる事になったよ」
「そうですか」
「…嫌な結末だな」
「で、異物はミング・カピトが持って行ったんだ」
ディックの隣に座ったいざないは頬杖を付き遠い目
「もう少し調べれば皆の記憶戻せるかもしれないけど…」
「……止めた方良いかもしれませんね」
「だよね…」
軽快にお菓子を食べ終えお茶カップを持つディックはしゅんとなる


〈ごちそーさま♪〉
休憩が終わると気を取り直しディックも明るい顔に戻った
「…さて、すぐ出ますか? いざない君」
「ああ。出現する可能性高いしな」
「じゃ、いざないこっち持って!」
「…は?」

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