マルー・クインクエ【零れた混ざり】・・・2

もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ

ビイスの住処では、大福の山を取り囲んだビイス達が大喜びで大福を両手で持ち頬張っている
「…」
「れいりが作ったお菓子美味しいでしょ♪」

〔とってもおいしい〕 ばっ
〔おいしい〕 ばっ
もきゅもきゅもきゅ

「ありがとー❤」 えへへ
書いた文字を即出ししては又大福に夢中になる。
カウザは一口二口食べた後呆気に取られビイスを眺めていた
「まだまだ沢山あるよー」

わっ

九十リッター入るくらいの袋三つをビイスに見せると皆は両手を挙げ歓声に包まれた
(こき使われねくて良かった…) 何だこの量は…
数十キロの大福袋を持ついざないは量の多さに引く
「カウザさんはお菓子苦手ですか?」
「…いや…ビイスらの食いつきように一驚しただけだ…礼を言う」
至る所で大福を食べるもきゅもきゅ音が鳴っている
「そう言えば…昨日一人だけ現れた」
「!」
「最後の混ざりか!!」
「そこまでして何故来るのか聞くと『くせだ』と言う」
「宝とかどーでもいいだろそれ」
目的の曖昧さに疲れが出て来る
「とにかくそいつ捕まえれば変化にいる混ざりはいなくなる――って事で張らせて貰うぞ」
「分かった」
れいりは違う味の大福をビイスに渡したり、ディックは皆の食べてる様子を微笑ましく見守っていた
「……」
和やかな空間が過ぎる中、いざないは神妙になるとカウザを見る
「……なあ、この前地下の奴ら連行してる時あんた見かけたんだけどさ」
ディックと一緒に見守っていたジンホウはいざないの言葉に耳を傾けた
「あんた“風”の法使えるだろ。ししょーが出した“風”追っ払ったのあんただよな」
「え?」
びっくりしたれいりは両手で口を塞ぎ慌てだす
「知らなかった。じゃ、あの時助けて貰ったんだ。ありがとうございます」
「…」
礼を言うがカウザは無言
「…………でさ…言いにくいんだけどあんた…ししょーの武器と関わりあるよな?」
(一丁さんの『嵐』と?)
「…これ以上は何も聞かねーし言わねーけどさ……」
歯切れ悪く濁すいざないにれいりもディックも訳が分からない
「本当は知りたいプリセプに代わって僕が聞きましょう♪」
「!」
「カウザさん、あなたは一体何者ですか?」
気を遣ういざないをほっとき、ジンホウは笑顔で直球質問を投げつけた
「と言ってもいざない君の口ぶりで僕も気付いてはいるんですけど」
「……」
「ありえない現象をどう説明するかなんですよね」
無表情で黙っていたカウザが口を開く
「……プリセプ…王族か」
「はい。今暗を治めてる女帝のご子息です。僕は側近やってます」
「おまっ」
「そしてこちらのれいり君がプリセプス、ソルムさんはれいり君の従者なんです」
「え?」
流暢に話が続くが、れいりは自分の事が出て来たので不思議そう
「れいりといざないはね、恋人なんだ!」
「!!」
追ってディックも参加
「二人とも死なない様にジンがね、今頑張って薬作ってるんだよ」
「薬無くてもリハビリは充分ですよ。ね、いざない」
「………」
話の流れにれいりも加わるが、皆の言う内容と微妙にずれた言葉にいざないは当惑し、ジンホウは苦笑い
「……………原因は我か…」
頭を垂れ一点を見つめる

きゅ

隣にいたビスがカウザの袖を掴む。カウザを見ていたビスはコクと頷いた

カウザはビスの黒くて大きな瞳をじっと見た後、落ちていた頭を上げ瞳の奥に一筋の光がさし込む。
意を決したカウザは隠れた道をビスと共に歩き出す

「お前達の疑問に答えよう。付いてくるといい」

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