マルー・クインクエ【真実】・・・2
「その後、明暗に分かれたエイウス達が争った事も、程が生まれた事も、死に合うのも、全て我が原因だ…」
「我の罪だ」
カウザの言葉にれいりは戸惑い悲しくなる
「“風”を調べると必ず検出される粉末はオレ・アエテルナの石だったのですね」
「……調べる? いかにしてそんな事が出来た?」
「つい最近分かった事なんですが、あの“風”は程と新しく出来た土地の物には何の反応も示さないのです」
「……」
「現在“風”は暗世界にありますが、一人の勇気ある程が猛毒の地である暗に進入し程の容器に封じ、自身も風に触れる事によって証明されました」
ジンホウの説明にカウザは虚を突かれ言葉が出なくなる
「その勇敢な程はいざない君のお父上なんですよ」
「!!」←い
「その“風”を全力で抑えているのが暗を治めている女帝ですし、二人の子であるいざない君の側近やってる僕は誇りに思います❤」
「何を余計な事をベラベラ…!!」
「えー、プリセプを持ち上げるのは側近として当然だし❤」
「プリセプ言うな!!」
陽気に話すジンホウに驚き詰め寄るいざない。
れいりは苦笑いして二人を見ていた
「明暗から見れば不遇の存在かもしれない程ですが、あの“風”と唯一対抗出来る砦になる可能性を秘めています」
楽しそうなジンホウだが瞳の奥は揺るがない意志を持ち、真っ直ぐにカウザを見つめる
「ここに“風”を生み出したご本人がいらっしゃるし“風”の無い世界が必ず来ると僕は思うのですが」
「うん! きっと来るよ!! 私も協力する❤」
「ディックさん❤」
嬉しくなったディックがジンホウに近寄り手を取り合って喜んでいる
「あ、僕は“風”専門では無いですが、明暗が死なない様にする為の研究をしてるんです。ディックさんは物作りに関しては相当な腕です❤」
「物作るのは好きだよ❤」
「カウザさん、僕達に力を貸して下さい」
風への突破口を開ける可能性に、カウザの心が微かに傾きだした
「…最初にお前達四種を見た時不思議だった。研究の為に集めた結果か」
「あまり良い響きではないですねぇ」
〈見透かされてら〉
申し訳なさ程度に微笑むジンホウに呆れたいざないは上目線
「お前達は我を責めぬのか」
「風って見た事無いから分かんない」
ディックは大戦後に生まれた
「話でしか…最近まで混ざりだった事も知らなかったし」
「小っちゃいのしか見た事ないしなー」
「そだね」
れいりもディック同様キョトンとし、いざないが研究所で見た風の事を言うと思い出したか相槌を打つ
「ソルムは?」
「アーツェには来なかった故何も感じない」
「そうなんだ」
ソルムはソルムで興味なさげ
「ま、皆そんな感じです。女帝が抑えてから数百年経ちますし、伝説化されてますね」
「……」
「しかし、確実に暗の地を浸食しつつあるのは間違いないです」
「…そうか」
現状を聞き目線が落ちる
「と言う事で、カウザさんの血を提供して欲しいのですが♪」
しゃきーん
「常備かそれ…」
いつの間にかジンホウの手元にディックお手製採血器があった
「混ざりの場合は“風”を利用してある程度良い結果が出てるのですが、明暗の場合はどうしても良い結果が出なかったのです。“風”の性質を知った今、明暗に効果が無いと気付きました」
「被験者には程の血清を投与して保って貰ってます」
「……」
被験者が誰か知ってるいざないは寒気がし青ざめた。
二人(ベス、プロッパ)はずっと眠り続けカプセルの中に横になっている
「明暗は毒を体内に取り入れてるだけで“エイウス”である事に変わりありません。恐らくカウザさんはどちらとも関わる事が出来るでしょう」
ディックとれいりはポカンとしてジンホウの話を聞いている
「カウザさんの“血”を調べて違う角度から切り込んでみたいと思いました。悪用はしません、僕達はこの事を『先への希望』と言うのですが」
説明+カウザへの交渉をジンホウは熱く語り続けた
「どうしても僕は完成させたいのです。カウザさんが“風”を止めたいのと気持ちは同じです」
「カウザさん、お願いします」
じっとジンホウを見てたカウザは偽りの無い事を感じ取ると口を開く
「こんな血で良ければ好きなだけ採れ」
「ありがとうございます!」
言うが早いかカウザに近づき採血を始めた
「あ、これ痛くないんで♪」
フォン
『?』とカウザとビイス達が見た時には終わっていた
「イン、びっくりするだろうなぁ」 でも内緒
「これでまた前進するね」
「はい!」
アタッシュケースの蓋を開け厳重に収める。外目からでも分かるジンホウのウキウキ振りにいざないは引いている
「ありがとう、ダイヤ君❤」
ダイヤ達の上にはもう一つ血が入った採血器があった
はっ
「もしかしてダイヤに俺の血採らせたのか!!?」
「言っても採血拒否るじゃないですか❤」 無くなってきてたんで
「たりめーだ!!」
知らないうちに血を採られたいざないは怒。れいり又々苦笑い
「…つー事はあの武器にはあんたの法が封じてあったのか」 どさくさにこいつは…
「…そうだ」
「一丁さんの武器?」
「ああ」
「正確には斧だ」
れいりはいざないに聞くが、カウザが言い直す
「…どー見ても大剣にしか見えねーけど」
「木を五本くらい同時に切り落とし運ぶのに便利だからと風を封じてくれと言われ収めた斧だ」
「…」
一丁の嵐を思い出す二人だがどうしても斧とは繋がらず無言
「カウザさんの所有物では無いんですね」
「友のだ」
「一丁さんがカウザさんの血を継いでると思ってましたが、違うのですね」
「一族の血を継いでるのは間違いないだろう」
予想が外れジンホウは残念がる
「カウザは恋人いなかったの?」
「いない」
話の流れで聞くディック
「そう言えばエイウスの文化はどんな感じなんでしょう」
「場所によって違う。この辺りは今の変化と似ている」
「では一夫多妻か一夫一婦制ですか」
「……あんた、ここ任せられるくらいなのに誰もいなかったのか」
「開発に明け暮れてた」
質問攻めされるカウザだが、淡々と返答している
「その気持ち分かります」
「…とっかえひっかえの奴が何を」
「あれは仕事ですって♪」
「…」
さりげなく話し合うジンホウといざない。
れいりは何の事か分からず『?』になっている
『……』 じー
「ビイス君達が何か言いたげですが」
四体のビイスが上から横からとカウザを見続けた
「…何だ、いたんじゃん」
ビイスの思考を読み、いざないが唖然とする
「どんな感じの方です?」
「ターバン巻いてるみてーな」
「あれは友だ」
いざないの言葉に頷くビス。しかしカウザは認めない
「その友とは斧所有者の方ですか?」
「そうだ」
「………」
「何となくこの辺のエイウスの文化が分かりました。明よりかもしれませんね。一丁さん、可能性ありますよ」 いわゆるあれですか
一拍置いた後、ある結論が出たジンホウは笑っていたが、気付いたれいりといざないは戸惑っている
「誰かビイス達の所にいる」
「!」
侵入者に気付いたカウザが歩き出す
「明の誰かが遊びに来たのかな?」
「行ってみましょう」
ビスは三体を残しカウザに付いて行き、その後をいざない達が追った
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