マルー・クインクエ【訪客】
バクバクバクバクバク
バクバクバクバクバク
「美味い!! こんなに美味い食い物初めてだ!!」
れいりの大福を一心に頬張る少年をビイス達は目の前に座って微笑ましく眺めている
「もっと食って良いのか!? お前達良い奴じゃないか!!」
一袋の積まれた大福をビイス二体が持って来た
「ウェル達は誤解してるんじゃないか?」
両手に大福を持ちご満悦な少年は喜んで大福を口の中に収めていく
バクバクバクバクバクバクバク
「…変化の子供か」
「…」
「お腹空いてたのかな…」
害の無い人物だった為、カウザは遠目で見てるだけで動く事は無い。
れいりも必死に食べる少年を眺めていたが、いざないは目をパチクリさせている
「…あれ…のの子の子供だ……」
「え…」
「しっ!」
大きい声が出そうになったれいりを注意
「最後の混ざりと一緒にいる子ですか」
「ああ」
「では混ざりもどこかに?」
「気配は無い」
カウザが辺りを窺うが何も感じず、ビスも頷く
「少し様子みっか」
いざない達は草の陰で少年の様子を見始めた
十分
バクバクバクバクバク
ニ十分
バクバクバクバクバク
三十分
バクバクバクバクバク
「……のの子並みに良く食うな…」
「……もっと作ってくれば良かった」
いつまでも食べ続ける少年に汗
パッ
〔もっと何か食べる?〕
「いいのか!……!! 違う! わしは食いに来た訳では無いんだ!」
ビイスの書き込みにハッとした少年は本来の目的を思い出す
「お前達の宝とは何か教えてくれ!!」
少なくなった大福に手が伸びそうになったが、ビイス達に向き直る
「わしの友達が、宝が何かも分からないのにここに良く入って来るじゃないか! 宝が何か分かればウェルだって納得してここから離れて逃げる事ができるんだ!!」
必死の思いでビイス達に訴える
「地下からやっと逃げたと言うに、宝が習慣づいて離れようとせん!! 後生だ、わしに宝が何か教えてくれ!!」
座り直し頭を何度も下げ頼み込む
「分かればウェルはここに来る事は無くなる! わしはウェル達とのんびりどこかで生きて行く、だから頼む!」
草陰にいたビスが側に来た人物と目を合わせた後、頭を下げてた少年の前へやって来た
「!」
ビスは大きな丸い物を少年に渡す
「これは……種か?」
頷くビス
「これが宝なのか!」
再び頷くビスに違和感を覚えるビイス達
「礼を言う! きっと珍しい木になるのだな!! 世話になった!!」
少年は大喜びでビイスの森から出て行った。
手を振って見送るビスだが、周りのビイス達は『?』で満たされている
「ビス君、ありがとうございます」 ガサ
「何の種だよあれ…」
隠れてたいざない達が顔を出す
「入口付近に落ちてたんですけどね、もしかしたらもうこの辺りでは無くなった木の種なのかなぁと」
洞窟を出た辺りで重なった種を見つけたジンホウが何気に拾ってきていた
「…友がよくあの場所に捨てていた…確かにその木はもうない」
「おや、でしたらそれも宝かもしれませんね♪」
「……ん万年も野ざらしで出てこねーと思う…」
「生命力を信じましょう」
「…」
『うんうん』とディックも頷きとても前向きな二人。れいり、三度目の苦笑い
「さて、ダイヤ君から連絡が入るまで待機ですね」
現れたダイヤは四体。一体は少年に付いて行った
「今回はふくれてねーのか」
「それ言っちゃうとダメですよ」
じとー
「言われて気付くのかよ…」
ダイヤはジト目でビスを見始めた
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