マルー・クインクエ【反撃】

――少し前

立ちはだかる見張りを次々と倒し、最後に残った見張りの顔を踏みつけ飛ぶとウェルは二~三回転し片足で着地した
「戦い慣れしてんな…」
いざないは倒れた見張りの横を通りながらウェルの戦いぶりを目で追っている。
出口を目指し走り続けるウェル。しかし行き止まりに気付き立ち止まる

バッ
「ソーミウム!!」

「効くか!!」 ぶんっ
ウェルが法を放つも効果の無いいざないは、同時に異物の拘束具を投げつける。
とっさに拘束具を避けると側にあった小屋へ進入、戻って来た異物を手に取りいざないも後に続く。
様子を見に来たまいちが二人を見つけ駆けて行く

ボッ

「――! 火つけやがった」
入口で着火音が聞こえ足を止めるが火元が見つからない
「……いや…ただの煙か!」
モクモク煙が充満する中、いざないは混ざりの所へ足を進める

ガッ
「!」

足を蹴られバランスを崩す。
体勢を整える前にウェルからしっかり頭を抱え込まれ、ウェルに体重を預けたまま倒れ込んだ。
恐ろしい状況に気付いたいざないは頭の中が真っ白に
「混ざりの男に興味を持った。確かめる」
「~~~~~~~」
ウェルの攻撃が開始

がっちり
「!!」

逃げようと抵抗する前にウェルの足がいざないの体にクロスで挟みホールドされた。
急いでバッグから拘束具を取ろうとするが、手が痙攣を起こし思う様に動かない
「邪魔だ」
ポイと眼鏡を放るといざないの髪が変わっていく
「随分鮮やかだ」
「~~~~!」
眼鏡が取れたお陰で動きが上がり、急いでバッグに手を突っ込む

ちゅううううう
「!!」

が、口を塞がれ再び固まった


「まいちさん!! いざないと混ざりの人は…」
「取り込み中です」
「え?」
扉入口から漏れる煙の壁側に立ってたまいちに気付き、やって来たれいりは尋ねる
「捕まえようとする意志があるので気絶はしてませんが、そろそろ限界が来そうなので気を失ったら入ろうかと」
「……」
小屋の入口に立ち修羅場を目撃
「そうですね! 良い訓練になりそうです。頑張れいざない!」
「…」
入口でしゃがみ、右手を握ってれいりは笑顔で見守った


(…い…意識が……)
視界が歪曲しクラクラするいざない。
ウェルの手は緩まずどんどん先へと進んだが、違和感を覚えた
「何だ、役立たずか」
その一言で現実に引き戻され、いざないの眉が吊り上がる

シャッ ガチ!

ウェルは拘束され身動きが出来なくなった
「ざけんじゃね――」
自由になったいざないは全身を震わせている
「てめーが役不足なだけだ、バーカ」
睨みつけるいざないにウェルは少しムッとした


「……違う…ただの虚勢だと思う」 ボソ
「…」
れいりの静かな突っ込みに後ろにいたソルムはただ眺めている
「副団長、彼女を二人の所へ連れて行きます」
「…捕まったのか!」
テキパキと進行するまいち
「程の方は自らやって来ました。詳しくは二人の話を聞いて下さい、こちらへ」
「…」
促すと、納得したかウェルは立ち上がる
「副団長、Tには」
まだ立つ事が出来ないいざないは眼鏡を手に取るも動きが鈍く真っ青だ
「連絡しとく」
「はい」
まいちとウェルは静かに本殿へと歩いて行く。
れいりは二人を目で追った

ピッ
「…Tか?~~~ああ、~~~~頼む」
用件を伝え手短に通信を切る

「……ダメだ………ダメ―ジでけぇ…」
体力よりも精神的大ダメージのいざないは未だぐったりし起き上がれない
「いざない、まだ動けない?」
「…ああ」
「んじゃ、先行ってるね」
「…ああ」
普通に会話後ギョッとした
「お前いつからいた!? ってかマルー戻ってねーのかよ!!!」
「ん? 煙出た時に大丈夫かなって来たけど」
呼び止められて振り向く
「マルー行かなかったのは、こっちに現れたからディックさんと相談して残ったの。少し落ち着いてから来るって皆に言っとくね」
「……」
聞かれた事を説明してれいりとソルムは本殿へ
「…………そ」
真顔になったいざないは二人を見ながら小さく呟く

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