マルー・クインクエ【憂節】・・・2

「世界の事ってたくさんあるんだ…」 うー
特別幹部の仕事の一つに世界情勢を知る必要がある為、分厚い資料を持ったれいりが紙を見ながら歩いている
「れいりちゃん❤」
「一丁さん、こんにちは」
「今日は度々ラッキーデーだ❤」
興奮冷め止まぬ頃、れいりと遭遇した一丁は再び目がハートと化した
「何だ? 資料か! 分からぬ事があったらいつでも聞いてくれ❤」
「…その時はお願いします」
一丁の勢いに押されながら笑顔で返事。
後ろにいたいざないがそっと何処かへ歩いて行く

〈あ。じゃ、早速…ここなんですけど〉
〈ぬ?…まいち!〉
〈はい〉

いざないを目で追ってたまいちが資料に目を通す。
ソルムもまいち同様後方を見ていた

ピピピ
「はい……え?」

連絡機を取り内容を聞く
「…さらに悪化しましたか……」
ジンホウは表情が曇り苦笑い
「話をしようにもいざない君僕を警戒して捕まらないんです」
「ジンー、お風呂空いたよー」
「すみませんが、暫く様子を見てて貰えますか?」
ほくほく湯気が漂いさっぱりしたディックが笑顔でリビングへやって来る
「はい、お願いします」 ピ
通信を切ると立ち上がる
「ディックさん、先に休んでて下さい❤」
「うん❤」
言われてディックは素直に布団に潜り込む

ガラ

「さて、困りましたねぇ」
脱衣カゴに衣類を置き、風呂場へと入って行く。
ポッケの中にはダイヤ達が眠っていた

         *

さらに日が経ち十日後
「よし! 今日も私やりきった!」
実習が終わり業務をこなしたれいりは、自画自賛し部屋のドアノブに手を置く
「プリセプス」
「?」


「今日は外食せぬか?」
「盛大軒すか?」
全体派も仕事が終わり、一丁がいざないに声を掛けると四人は自然に外へ足が動く
「いや、隣を挟んだ万福館だ」
「そこ割高じゃ」
耳元へ近づき、にやけた一丁は声のトーンを下げコソコソ
「そこにとてもプリチーな子が働きだしたんだ。サーチ済みよ」
いざないの目がキラリと光る
「つー事は奢りすね!」
「おうとも!」
一丁ルールで奢りが確定。
後ろを向き、ただおとまいちを手招きする
「では行くぞ、皆の者!!」
「…」
一人、ただおだけが呆れていた

シャッ ガチ!

目にも見えない速さで何かが飛んでくると、あっという間にいざないは身動きが取れなくなった
「………鎖!?」
『いざいざごめんねー』
『ソルソルつかまえろってー』
一瞬何が起きたか分からず視線を感じ下を向くと、大量の鎖の瞳がいざないをじ~っと見ている

ぐい
「!!」

「いざない!?」
飛ぶように後ろに引っ張られるいざないに一丁は驚く
「いざないは連れて行く」
長くなった鎖の先にはソルムの姿。
ソルムはいざないが立つ前に踵を返し歩いて行く
「おい…ま…ソルム…!!」

ずる ずる ずる ずる

「…すみませんが助けられません……」
「……」
引き摺られていくいざないを見る三人。
ただおと一丁は身が竦んでいる


ずる ずる ずる ずる

来賓用入口に到着

とん とん とん ごん!

「って」
階段の角に頭をぶつけた
「半分従者では無かったのか?」
「!」
「何日間もプリセプスの側を離れ疎かにしている」
「……」
いざないの目が丸くなる
「それ故連れて来た」
ぐいと持ち上げ強制的にいざないを立ち上げる
「プリセプスに詫びてくるといい」
「!!」
拘束が外れ、勢いつけてれいりの部屋へと放り込む

バタン

そして扉横に立つと普段のソルムに戻った
「あ、いざない」
「…」
困惑するいざない。
れいりはリビングのソファに座りキョトンとした顔で見ている。
テーブルの端には小さな犬のぬいぐるみがいた
「ソルムがいざない連れて来るって言って消えたからびっくりしちゃった。忙しかったんでしょ、仕事大丈夫?」
「…………まあ」
「ちょっと待ってて、時間あるならお茶くらい出すよ。お菓子は無いけど」
「……」
れいりは立つと水場へ。
いざないは動く事はせずにリビング内を見ていた
「人形あんまねーな」
「いずれ出ないとなのに、私物化出来ないでしょ!」
人形の少なさに意外そう。
お茶セットを持って来たれいりは眉を寄せむくれている


「で、いつこっち来られるの?」
香りの良いお茶の湯気を嗅ぎながら、れいりは静かに一口啜る
「ディックさん泣いてんだからね。早くこっち来てよ」
「……も、終わったみてーなもんだし」
お茶に手を出さず膝の上、れいりとも目を合わせない
「じゃ、今日から?」
「…………まあ」
通路では引き摺る音を聞いたジンホウが顔を出しソルム側を窺っていた。
ディックの為に泊まってたらしい
「なんだ、良かった」
問い詰めていたれいりの顔が緩むとほっこり笑顔。
目を逸らしていたいざないはれいりを見て口を結び、やるせなくなっていた
「…そーなんだよなー。お前はやっぱそーなんだよ…何か俺だけバカみてぇ」 はあ
「何が?」
大きな溜息を吐くいざないに理解出来ないれいりは顰め面
「何でもねー、今日からまた半分従者やるよ」
「うん、いいよ」
溜息しつつ冷めたお茶を飲みきると、れいりは食器を集め水場へ持って行く
「じゃ、リハビリも再開だね」
「…」
戻って来たれいりを見て考えた
「なあ、そのリハビリ俺からもありか?」
「…? ありなんじゃない」
「じゃあよ」
立ち上がるとれいりの後ろへ周り優しく両腕で囲む
「これも良いんだよな?」
「…ありかもだけど、いざないからは意味無いんじゃ」
「…意味あるだろ」
「どの辺が?」
背後にいるのでいざないが照れてはにかんでる様子がさっぱり分からずれいりは何処までも意味不状態
「も、いい。お前だし諦めてる」
「?」
モフモフを顔にくっつけ、すっきり感は無かったが仕方ないと妥協した
「…たまになら俺からも良いよな!」
「…良いけど?」
「おう!」

ぱっ くるっ ガッチリ!
「!!」

交渉が成立し手を離すが、その隙に向き直ったれいりがしがみつく
「お前はしなくてい……てえ―――!!」

ぎうううううううううう

『~~~……う゛え゛』
「…」←ソ
通路まで聞こえる嘔気音

カチャ

よろけながら通路へ出ると隣の部屋へ

バタン

『いざない!!』
『――!! ディッ…』

ぎゅ―――

『ディ…はな……』
『うわー❤ いざない―――❤❤』
第二波到来

「助かりましたソルムさん。正直どうやってこちらに連れて来るか困ってたんです」
通路に出て来たジンホウがソルムの元へ
「たわいない事でプリセプスを避け従者の務めを怠った。どうしても腑に落ちなかっただけだ」
「そう言えばソルムさんも見てたんですね」
ソルムは呆れた感じで長めに一息吐く
「差支え無ければその時の状況を詳しく♪」 いざない君の側近ですし❤
「……」
わくわくしてソルムの言葉を待つ。
ジンホウはただソルムからの視点を聞きたいだけだ

・・・

「やっぱりいざない君とれいり君て面白いなぁ」 お腹が…
「…」
お腹に手を添え笑いながらジンホウは去って行った

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