マルー・クインクエ【ゆるゆる事件】・・・3

――マルー

バサ
「はい、キウド伯の資料です❤」

10㎏近くの資料を机に置くと、それぞれ手に取り見始める
「嬉しいなぁ♪ いざない君が力貸して欲しいなんて言うもんだから、ありったけ用意しましたよ❤」 アハ❤
「……」
ご機嫌なジンホウにいざないは遠い目
「何度かお見かけしましたね、僕はジンホウと言います。いざない君の側近やってます❤」
「…」
「そうでありましたとか! 某てっきり夫人専属の幹部だと思っとリました。風切り派、つちの どしやとです」
挨拶するとかしこまったどしやもペコリと頭を下げた。
いざないは反論する気も失せている
「それで副団長殿…協力費は…」
「マルーじゃねーんでいらないす」
「そうですとか!!」
出費にならず一安心
「ええ♪ お礼はいざない君の体で返して貰ってますので必要ありません❤」
「!?」
「紛らわしい言い方すんな!!」
「えー、本当の事だし」
「~~~~」
※採血の事
喜ぶジンホウに返す言葉も出てこない。
あまり関わってはいけない事だとどしやは感じ取り、二人からそっと離れた
「キウド伯は発明では輝かしい功績ばかりですね」
「はい、資料のほとんどが表向きの実績ですね」
ただおは『ダミーで泥棒撃退!』『自動化』等、記事にされた部分を読んでいる。
一丁は紙を持ってはいるが文字が入る度目を逸らし頭痛を起こしていた
「聞く所によると、キウド伯には怖い噂があるんです」
「何だ?」
〈むづかしいと…〉
どしやも中身を見る事は見るが一、二行で根を上げている
「キウド伯が所有する灰・赤・青の三つの城の内、灰の城には夜になると“人形が動き出し徘徊する”と言う噂です」
「…ふーん」
ジンホウに顔を向けていたが、大した事で無かったので再び資料に目を通す
「おや、反応が鈍い。やはりこう言った話は女性向けですかね」
「精密な人形作んならそれくらいできんだろ」
「まぁ、そうなんですが」

〈ただお任せた~~〉
〈…〉
とうとう目を回した一丁が頭を机に置き動かなくなった

「赤の城では人形同士の戦闘が繰り広げられ、青の城は敗れた人形の墓場になるとか――ま、噂です」
「赤・青えげつねーな」
徘徊の事よりヤバめな話にちょっと反応。
隣のどしやは涙を流し机に突っ伏すと降参していた
「キウド伯の所有する土地は、戦闘が激化した場所でした」
「人形のか」
「明暗です」
「!?」
寝ていた一丁とどしやはハッとなり頭が起き上がる
「全て撤収した後に何代か前のキウド伯が土地を買ったのですが」
ずっと立っていたジンホウは椅子に座る事はせずに近くの壁に寄りかかった
「その後、財を作り富裕層の仲間入りをしたのです」
「…撤収って異物か」
「はい」
雲行きが怪しくなりいざないも真面目な顔になっていく
「もしかしたらあの城には回収しきれなかった異物が隠されてるかもしれませんねぇ。発明は異物を所持する場合、安全な物以外は没収されます。不明確な物も禁止です」
ただおも見ていた資料の手を休め、ジンホウの話を真摯に聞く
「ある程度の地位を築いたキウド伯を容易に調べる事は出来ません」
「…」
「人形に対しても異物が関与してる可能性が無いとは言い切れないんです」
気もそぞろだったどしやも驚いてジンホウに耳を傾けている
「ま、皆の為に利用してると言うなら罰金だけで申請許可貰えば良いだけなんですけどね」
ジンホウはニコリと笑顔
「ですからキウド邸に入り込める良い機会なんです。頑張ってください」
「…皆入れる訳でねーんだ」 ピラ
「おや」
いざないから例の手紙(二枚)を受け取り読んでいる
「なるほど。それでつちのさんですか」
「つーか、詳しくね?」
「まぁ、発明の内部は全てインに来るんで」
「…」
ジンホウが暇な時こっそり書類を見てた際、見つけたインが『コラ!』と注意している。
その様子が視えたいざないは呆れていた
「…資料の意味あったか」
「いざない君、資料欲しいって言うから❤」
「……」
「とにかく夫人に異物の事を伝えてキウド邸に向かいましょう。後一日しか無いんです」
立ち上がるただお。まいちも倣い席を立つ
「忙しいですね」
「どしやさん、やはりかんこさんは連れ出した方が良いと思います。結婚の事は後日話し合えば…」
「不可能ですと!!」
現実に戻されたどしやは深く椅子に座り頭を抱えた

〈結婚はいやですと、ダメですと! 受け入れられないですとー!〉

「つちのさん結婚嫌なんだ」
「はい、見解の相違があって…」
喚くどしやの様子を見ているジンホウ。ただおも戸惑っていた
「逆玉の輿なのに勿体ない♪」
「それが二番目に嫌な理由ですと!」
「二番なんだ」
「……」
意外な返事にジンホウは楽しげ
「でもこのままではかんこさんが…」
「ムリですと~~~」
狼狽するどしやに周りも困惑
「では、こうすればどうでしょう」
ジンホウは人差し指を上に出しニコニコと提案を述べる
「キウド伯が異物を所持してる疑いがあるので、依頼を受け潜入したと言うのです」
「それなら何とか行けんじゃね?」
「はい」
「よく出て来るの…」
頷くただおと関心する一丁
「行けるか? どしや」
「…分かりましたと!」
別の理由であるならばと、重石になっていた体を解除し起立した。
他の四人も行動を開始する
「…なあ、ダイヤで行けねえか?」
「うーん、位置付けしないと行けませんね」
すぐ移動したかったが断られる
「まこと発明は行きにくい…『嵐』を置いてゆかんとか…」
「私のもです」←た
「同じく」←ま
「某も…」
「俺も引っ掛かる…」
常に持ち歩く武器を携帯出来ない事にそれぞれ落胆。
いざないは眼鏡が引っ掛かるらしい

「……」

ふと、いざないは何か大事な事を忘れてる様な感覚に陥り過去の記憶を辿る
「お前VIPじゃ無かったか?」
〈なに!?〉←一・た・ど
のほほんとしてるジンホウを見た。
一丁、ただお、どしやは驚き注目
「ああ、ゲートですか。そう言えばそうでした」 いつもダイヤ君で忘れてました
コートのポッケで寝ているダイヤに手を置きナデナデしている
「よし! これでこのまま発明に行けるぞ!!」
「目視で分かるのはダメですよ♪ さすがに」 一丁さんといいさんかな

〈そうですね…〉
〈そうだった〉

光明が見え喜ぶも、指摘を受けた二人はがっかり

         *

「つちの どしや様ですね。こちらへご案内します」

キウド邸前。
頑丈な門が左右に開かれ出て来たメイドに誘導されるまま、どしやは邸内へと入って行く。
数歩行った所に高級車が待ち構え、メイドとどしやは乗車し行ってしまった

ガー
「…」

その間ゆっくりと門が閉まっていく
「どしやは行ってしまったが…オレらはここにいる意味はあるのだろうか」
「式挙げるとなると時間掛かるっすね」
「潜り込む訳にも行かないですし…」
かなり離れた場所で五人は様子を見ていた。
一丁、いざない、ただおは難しい顔をして悩んでいたが、まいちは一歩後ろで前の三人を眺め、その横にいたジンホウは連絡機を操作している
「近くの宿に連絡付けました。一旦そちらで待ちましょう」
「…」
「そうだな、そうしよう!」
いつの間に何かをしてるジンホウにいざないは汗。
一丁は話に乗り、他の三人もジンホウの後に続く

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