マルー・クインクエ【ゆるゆる事件】・・・5
ヴォン
「部屋の一角か」
「まずはどしやを探さねばならん」
着いた先は明かりの無い薄暗い部屋。
客間の様で高級家具がふんだんに置かれていた
「いざない、どうだ?」
「この部屋にいた事は確かだ」
周りを観察するいざないはどしやがいた事を確信する
「お待ちしておりました」
「!!」
「四名様ですね。こちらへご案内します」
いつの間にかいたメイドが、片手を横に滑らせると一丁達を別場所へ促す
「プリティ美女!!」
「団長!!」
メイドに飛びつきそうな所をただおが押さえる
「やはり何かあるのでしょうか。すぐ気付かれてます」
「…プリティちゃんの後ろを行くしかない様だの」
まいちも疑問。
スタスタと先を歩くメイドの後ろをピッタリ付いて行きそうな勢いの一丁にただおが腕を掴み引っ張っている。
後に続くいざないもメイドを眺め感嘆した
「…すげぇな」
「うんうん、プリティちゃん良い腰付きだの❤」
「いや…そうじゃなくてあのメイド、人形す」
「何!!?」
驚いた一丁は立ち止まり歩くメイドを見続けた
「俺達に対応したメイドも多分同じだ」
「……」
「街にいたら全然気付きませんよ…私達と何ら変わり無いです…」
一丁の陰から顔を覗かすただおもメイドを見て目を疑う
「これは買いではないのか!? 一体いくらだ! 是非ともオレの…」
「今は慎んで下さい!!」
「……」
ただおのお叱りが入る
「こちらへお乗りください」
「おうとも❤」
〈あー、もう!〉
一丁は昇降機に急いで乗り込むと、力負けしたただおはそのまま連れて行かれた。
遠巻きに見ているいざないとまいち。
まいちはただおがいるので楽をしている
ガコン
昇降機は数回揺れると上へ昇っていく
パッ
ワアアアアアアアアアアア
「…ここは」
到着した場所は広い床面。
四人が昇りきると方々からライトが照らされ、数千はいるか仮面を被った観客の大声援が沸き起こる
『紳士、淑女の皆様。お待たせしましーた!』
〈キウド! キウド! キウド!〉
『今宵は特別ゲスト、四人が加わり白熱バトルが行われまーす』
〈キウド! キウド! キウド!〉
ガラス面で囲まれた観客席の最上部、拡声器片手にキウド伯が声を張り上げパフォーマンスをしている。
アナウンスがかき消されるくらいのキウドコールが引っ切りなしだ
『ルールは簡単、最後まで生き残れば勝ち』
チャリン チャリン チャリン
『さあ皆様、この者はと思ったらすぐ投下でーす!!!』
観客席の肘掛けに備えてある投下口にコインが次々吸い込まれていく
「…ヤロウ、非合法の賭博場か」
「あれ見て下さい!」
ネタが割れた事にいざないの表情が険しくなり、仮面を着けた観客を睨み付ける。
ただおが指差した場所には、ステッキを振り回し自らをアピールするキウド伯の他、まりもとどしやが椅子に座り佇んでいた
「かんこさん、ぼんやりしてます…」
「どしやに至っては寝ておる」
「何かされた事は確かですね」
寝ているどしやと彼の腕に手を回しボーッとしているまりも。
明らかに様子がおかしい事に一丁達も気が気でない
『四人に対抗するのは私の可愛いベイビー達』 パッ
ワー ワー ワー ワー
「!」
暗かった場所にライトが照らされると十一体のメイドと執事が勢揃い。
一丁達を連れて来たメイドもそこに駆け付け十二体になると同じ様に整列した
『先に四人を墓場に送ってから、恒例のブレイクバトルを始めようじゃあーりませんかー!!』
オオオオオオ
今までに無い大音量。
仮面の観客は腕を挙げ興奮しまくっている
「舐められたもんだの。先にオレらが木っ端微塵にしてくれるわ」
いつになく真面目顔の一丁は数メートル先にいるメイド達を見据えた
「ししょー、気ぃ付けて…」
「臆したかいざない」
「いや…」
いざないは眉を顰め厳しい顔
『レディ―――』
「あいつら全員異物持ってる」
『ゴォ―――』
「何!!?」
「来ました!」
合図と共にメイド達が走って来た
「簡単に近づけぬではないか!!」
「ひとまずかわしながら見定めねーと!」
「フォーメーション“O”」
出遅れた一丁達の周りを囲む
「GO」
一斉に足を蹴って飛び掛かった
「ウオルシルクリ!」
ビタン!!
半球の結界が現れ激突すると、メイド達はずるずると床面に落ちて行く。
法が現れた事に驚きざわつく観客と目を見張るキウド伯
「まりも嬢と同じ物を持ってるのですか」
首元の丸く大きな宝石が怪しく光る
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