マルー・クインクエ【ゆるゆる事件】・・・7
「コクレア」
ポン
一丁達が話をしている間、後方で一体のメイドがカタツムリを出現させ、鍋を持つメイドが煮込んだ液体を飲ませている
「団長…殿……某…を早く…倒して…下さいと」
どしや執事が走って来て一丁に仕掛けだす
「お主を倒したら元に戻るのか!?」
「……分かりま…せんと」
会話しながら一丁は器用に攻撃をかいくぐり、どしやはたどたどしく執事から言葉を発する
「しかし…操られ…るくらい…なら……!」
「腹は……くくって…ますと」
「…どしや!」
固定された微笑顔から出る決意の言葉に一丁も憂慮する
「一つ聞くが、男の人形に“あれ”は付いてるのか!?」
武器を振り回す動きが止まると、右手で確認
「……………ついてると」
執事、驚く
「何と言う精巧さ!! 恐れ入った!」
「こんな時に何聞いてんですか――!!!」
ただお、激おこ
「こう言う時は執事人形忠実なのか…」
呆れたいざないは汗
ピタ ピタ ピタ
後ろから聞こえる謎の奇怪音に振り向くと、増殖したカタツムリが床を這いずり、通った場所がボロボロに崩れている
「床が腐食してる!」
「カタツムリが大量におるぞ!!」
太鼓の拍子に合わせリズミカルにぬめ歩くカタツムリ。動ける範囲が少しずつ狭くなり、一丁達は追い詰められていく。
前方のどしや、後方のメイドとカタツムリ。いざないはある策を思い付き、一丁に手会話を始めた
「ししょー」
パパパ
「どしや、こっちだ!」
目視した後一丁は走り出しある場所で止まると向き直る
「さあ、打ってこい!!」
ブン! ズシ…プチプチ ミシ
言われて打つと一丁は高く飛びどしや執事の後ろ側へ回る。
攻撃が当たったのはカタツムリとメイド四体。皆動きが止まり戦闘不能となった
「よし! これは使える!!」
潰れたメイド達を見てる隙に、どしや執事はもう一つの武器を取り出し前傾姿勢で一丁に斬り付けた
ザクッ
「ししょー!!」
ワアアアアアア
「これだ、私はこれが見たかった!」
噴き出す鮮血に観客は大興奮
「大事ない。腕を掠っただけだ」
右腕を左手で押さえ、やって来たいざない達に軽傷だと主張し体勢を整える
「カタツムリと四体潰れたのは大きい」
「残り六体ですね」
「どしやの武器がここで役立つと…は…」
急に目眩を起こした一丁は床に膝をつく
「団長!?…ウオルシルクリ!」 パァ
結界を張り一丁を見ると、血がしとしと流れ続け、押さえていた左手の指間からも零れ出し止まる様子が窺えない
「…! あの武器何か封印されてんのか!! 血が止まんねーぞ」
「止血します」
まいちが布で応急処置を始めた
ただおの結界の中で武器を守っていたダイヤが、外側で大きな袋を抱え落ちた異物の花を袋に入れている人物を見ている
「どしやの相手をせねばならん。倒れてる訳には…!!」
「…」
止血はするが、当てた布からも滲む血に周りも不安の色が隠せない
「いざない! あの武器の対応は出来るか」
「…分かった」
苦々しくどしや執事の持つ両刃斧を見ようと振り返る
「あの武器の性質は一体何…」
〈えっと…あれもだね❤〉
「…………」
大きな袋を引き摺り異物を集める人物を見たいざないは目点
「……………ディック……いつから…」
「あ、いざない! 今来たの❤ 異物いっぱいあるから集めてってジンが❤」
いざないに気付いたディックは笑顔で対応している
トン!
執事がディックの前で太鼓を叩いた
「うわー、太鼓だー❤ 戻ったら演奏会やりたーい」
もちろん何の影響も無いディックは執事から太鼓を取り袋の中へ
「ごめんね。これも貰うよ」
取られた執事は棒立ち
「…D、どんどん集めてます」
苦戦していたのが嘘のように異物を集めまくるディックにただおは唖然
「うわー、ガラス玉だー❤ えっと、十個だ」
しゃがんでガラス玉を拾い袋の中へコロコロ転がしながら入れている
「ディック! 武器持った奴に気ぃつけろ!!」
「うん♪ 鬼ごっこだね」 わー
ディックに近づいた武器持ちにいざないはギョッとするも、ディックはヒラリとかわし嬉しそうにメイドから離れて行った
「さんぼーちょー、何も持ってない人形を!」
「はい」
一旦結界を解除し二人が飛び出した
「団長、参謀長が倒すまで待ちましょう」
「…ああ」
いざないがメイドを拘束し、まいちが急所にとどめを打ち込む。
二人の連携で執事も同じ様に倒す事が出来た
ブオーン
「危ねっ」
鉄球が視界を遮ると、いざないは身を屈め拘束具を投げつけた
カキン!
「くそっ 異物持ってる奴はダメか!」
円を描く鉄球と拘束具がぶつかり、いざないの元に戻って来る
「君はギターだ❤」
ぶん ガチ!
ディックがギターを取ると、背中を見せていたいざないがすかさず後ろに拘束具を投げメイドを捕獲。
まいちが駆け付け攻撃した
たたたた ドサッ
「よし! 三体潰した!!」
「………」
ザワザワザワ
〈乱入者か!?〉
ディック登場に加え、流れるような戦いに観客は再度どよめき、キウド伯は笑っていたが無言で見続けている
「ディック! 人形の一体に俺達の仲間が入ってんだ! 倒して戻る事出来んのか!?」 あれ
指差す場所に顔を向けると寝ているどしやにディックが気付く
「眠ってるの?」
「ああ!」
「大丈夫だよ。夢見てるだけだと思う」
「よし! ししょー…」
ディックの言葉に安心し休憩してる一丁へ声掛けしたが、ただおが青ざめ狼狽えている
「団長の具合がどんどん……!!」
「!!」
一丁は意識が混濁し呼吸も荒くなっていた
「結界を外してくれ」
あまり聞かない声にハッとしたが、ただおは急いで解除する
「スクルプトレッド」
シュオ
一丁に法が螺旋状に纏わり付くと、少しずつ呼吸が整い傷口も塞がった。
まだ目を瞑り目覚めてはいないが、顔色が良くなった事にいざないも後ろにいたまいちも安堵する
「いざない、残ってるのは全て暗の武器持ちか?」
「…ああ」
「自分がやる、こちらにいろ」
一丁の回復が終わり、立ち上がったインはまだ残るメイド達を見据えた
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