マルー・クインクエ【三世界大会】・・・1

マヌイの中でも賑わいのある街の外れ、競技用に作られた会場では各地域の主要人物、経済に影響のある人物らが招かれ大賑わいとなっていた
「お二方、混溶によくいらした。我ら三世界の親交をより一層深めこの三日間楽しんでいってくれ」
両側に近衛を侍らせた統者は腰に手を置き、偉そ堂々たる貫禄を見せている

《でっかい。どーやったらそこまで腫れる?》
《ヘッド、もう少し視線を上へ》

統者を目の前に発明世界のヘッド“ナカナ・ナルヤ”と弟で秘書“ナカナ・イル”はどでかい胸に圧倒されていた
「食べて良し、寝るも良し、遊ぶも良し! 大会以外はとにかく自由。但し、この施設内に限りだ。外は保障しない」

《変化のにーちゃんじーちゃん傷だらけ》
《荒れてるんでしょ》

ヘッドの隣にいる変化世界の長“てんしん くびき”と若の“てんしん くいだ”は顔と体が痣と傷で痛々しい。後ろにはひじおとよつじがいる
「とにかくややこしいのはオレ様苦手だ。よろしく頼む!」

《めんどーな所ヘッドと似てます》
《そこまで横着しねーよ》

「初日のスポーツ大会はこちらです」
一人の近衛が観客席へと案内する
「さあ、オレ様の為に行って来い❤」
「はい!」
統者の周りにいた近衛が会場へ
「あー、負けるなよ」
「はい!!」
ヘッドも統者に倣いこれから参加する衛兵に応援の言葉を掛ける。
それぞれ着席すると渡された紙に目を通していた
「球を使った遊びか、何かの参考になるかもしれん。ひじお、よつじ、しっかと見ておけ」
「はい」
ソファに胡坐をかき寛ぐ若。
後方の扉が開くと衛兵が入って来た
「イトル三! メイズ三! てん五師を連れて参りました。定位置に着きます」
「ごくろう」
イトル三とメイズ三がヘッド達の両端に立ち、てん五師と呼ばれ入って来た二人はヘッドの後ろへと位置する。
てん五師は二人とも0.5と言う帽子を被り、赤髪でサングラスを掛けていた
「ほーほー、あんなにデカイおなごは変化にはあまりおらんて。珍しい」
「充分に乳が出なければただの飾りだ」
やはり統者の胸は目立つらしい

《直球か。じーちゃんにーちゃん言うなぁ》
《ヘッドが言ったらセクハラです》

「…ちーっす」
「来たか!! さあっ オレ様の隣に並べ!!!」
控えめに開く扉から聞こえた声に統者のテンションが上がり、二人の腕を掴むと強引に連れて来た
「!!」
「こっちだこっち!!」
「私はカウントを任されてますので」 カチ
「好きなだけ数えるんだ❤」
塞がってない方の腕で計測器を持ち、まいちは秒単位でボタンを押していく
「オレ様はこれがしたかった❤ 何という至福❤❤」

カチカチカチカチ…

右手にはいざないの腕、左手はまいち。
幸せ一杯の統者とは裏腹に、引き込まれたいざないは呼吸も浅く顔色が悪い
「残りの四人はオレ様の見える所に立て!! そうだ、いいぞ!!」

カチカチカチ…

(警護の意味あんのか…)
言われて素直に立つマルー人員。
統者のやりたい放題に引くいざないだが、まいちはひたすら計測器を押している

《噂通りの色摩だな》
《ヘッドはふつーで良かったです》

ポカンとして統者達を見るヘッドと衛兵
「ほう。混溶にもその様な習わしがあるのか」
「ほーほー」
「オレ様のみの特権だ! どうだ変化の若もオレ様の近くに❤」

カチカチカチ…

「女房で間に合ってる」
体よく断られた

カチカチカチカチカチ…

(金に釣られたが…やっぱ止めときゃ良かった…)
体だけは統者から距離を取り、後悔の念に駆られたいざないは目を落とし項垂れている
「?」
視線を感じるとヘッドの後ろで警護をしていた一人の衛兵と目が合った。
一人は唖然として見ていたが、もう一人は背中を向け小刻みに震えている
「…………」
じっと見てたいざないは気付く
「ジ…」
「おい! おかちの息子!!」

ぐいっ
「!!」

「どうだ、お前達二人、これが終わったらオレ様の部屋に来ねえか?」
耳付近で囁かれ背筋が凍った
「では今使用してる二つを回収させて…」

カチカチカチ…

「まてまて!! 仕事じゃない個人でだ」
「お断りします」
「……同じく!!」
「金は弾むぞっ どうだ!」
「嫌です」
「同じく…」
冷静に断るまいちに急いで乗っかる

カチカチカチカチ…

「おかちの紙がなけりゃ…」
例の同意書が引っ掛かる様で、統者はブーたれている。
難を逃れたいざないは再び体を伸ばし離れると項垂れた。
四人のマルー人員と発明世界側の人達は呆然

《あの統者、羞恥心一切ないなー》
《目付けられなくて良かったです》

「どうされました、マツドてん五師」
「…いえ」
堪えきれない一人の衛兵が腹に手を置き震えていた。
その間も引っ切り無しに計測器の音が鳴っている

《大会見るよりこっちの方面白くないか?》
《始まるまで見てるのもありです》

(発明の奴ら見世物にしやがって…)
呟く声に睨むもヘッドと弟の口は閉じている
(…ん?……あいつら中で会話してんのか、何かの能力か?)
「ヘッド、出て来ました」
ヘッドと弟は素知らぬ顔で今度は普通に会話し、会場入りした衛兵と近衛を眺め出す


「あ、選手が出て来た」
「楽しみですね」
統者達と反対側の一般席に座るれいり達マルー人員は、やって来た選手に期待感溢れワクワクしていた
「うう~~、まだまいち様掴んでる~~~~」
「はあ~~なれろお~~~~」
まいちファンの怒りがガラス張り向こうにいる統者に集中。気付いたれいりとイソネも統者側を見る
「終わるまで離れなさげです」
「でも仕事なら仕方無いのかな…?」
れいりはいざないの様子がおかしい事に気付いた
(いざないが青くなってるけど、大丈夫なのだろうか…)
ちょっと冷や冷やしている
「六対六でボールを相手側に落としたら勝ちのルールですね」

「あ、近衛の方が入場です」

はっ

さわやかイケメーンの近衛達を見たマルー女子の顔付きが変わる

キャ―――

会場が黄色い声で埋まった
「オレ様のコレクション共だ。当然だな❤」
「…」
誇らしげに笑う統者。
いざない他、人員唖然
「あーあ。こりゃ負けか発明」
「兵ですから精神建て直せばいけるでしょう」
頬杖をつき終わった感のあるヘッド。
会場は悲鳴に近い声で埋まり、ボールを持った衛兵達は厳しい表情をしている
「いいか、惑わされるな」
「分かってます」
「はい」

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