マルー・クインクエ【三世界大会】・・・2
ピー
[開始]
衛兵の打ったボールが近衛の脇を通り、床に落ちた。
すかさず打ち続け近衛の反撃が間に合わず連続ポイントをゲットする
「おー、五点リード」
感心するヘッド。表情の変化はあまりなく、常に眠そうだ
こ・の・え こ・の・え
何処からか近衛コールが始まると皆後に続く
こ・の・え こ・の・え
「勝ってるのにこの敗北感は何なんだ!?」
「気にするなレジ五佐! 打て!!」
ボールを持つレジ五佐は近衛コールに戸惑った
こ・の・え こ・の・え
「味方が近衛を応援してどうする!!」
衛兵の女達が近衛コールをしてた事にびっくり
ダン
「!」
近衛のボールが衛兵側に落ちポイントが入ると近衛は手を上げ会場の皆にお礼する
キャ――
再び黄色い声で埋まった
「あーあ、女の衛兵近衛に応援してら」
「見た目って重要ですね」
期待薄で見守るヘッドと冷静な弟
「大衆とは恐ろしいな」
「そやつらを掌握してる混溶と発明は感心するのう」
若と長は真面目に試合を見ている
「近衛の方がこっちに来ました!!」
転がったボールを拾いれいり達の近くにやって来た近衛を近くで見ようと、座っていた女子達が前のめり
ニコ
気付いた衛兵は爽やかに笑う
キャ―――
「うわっ」
後ろから聞こえる大音量にれいりは目を丸くする
キャー キャー キャー
「上手いなー、自分っていうの分かってる」
「衛兵危ういですね」
己の武器を最大に発揮する近衛に感心
(どーでもいい、早く終わってくれ…)
掴まれてるいざないはこの時間が過ぎるのをただ待っていた
その後、巻き返され一セット近衛が勝利。
近衛声援が止まぬ会場に佇む衛兵の選手は苦い顔をしている
「ズツ四佐! 自分に気合を入れて下さい!!」
バシ!
一人に平手打ちをすると、驚いた観客が衛兵に目を向ける
「ありがとうございますっ!」
「自分にも!!」
バシ
「お願いします!!」
バシィ
選手全員が平手打ちを受ける
「ほう、場の空気を戻しおった」
「ここからですね」
静まり返った会場。
女子に押され後席にいる一丁達男子は衛兵に注目した
「行こう!」
「はいっ」
気持ちが引き締まった衛兵は試合をするべく位置に付く
「何と言う暴力的な。マルーで良かったです」 ふー
「ガリさんだったら再起不能になっちゃいますね」
一人、難色を示すガリに頭脳派員も同意
それ以降、衛兵女子も味方応援に戻り、二セット目は衛兵が勝利。
三セット目で勝敗が決まる為、近衛も衛兵も真剣になり試合が開始された
カチカチカチ…
「流れが変わっちまったか、だがオレ様の近衛はここで終わらねえぞ」
統者は不敵に笑い三セット目を余裕で見ている
開始されると、近衛達の動きが違う事に衛兵が気付く。
素早い動きに目移りし、衛兵は付いて行けずにどんどんポイントが奪われていった
「あ、こりゃダメだ」
今までと違う近衛達にヘッドも諦め感が増す
〈やりますね。最初に様子見、翻弄に徹し二セット目で衛兵の癖、動きを分析。三セット目で本領発揮ですか〉 ボソボソ
〈凄いね。近衛の息ぴったり、踊り見てるみたい〉
後ろにいるてん五師二人も小声で会話し称賛している
〈ええ。皆見入ってます〉
観客席にいる一般ギャラリーも近衛の華麗な動きに目を奪われていた
ピー
終了の合図が鳴り、二対一で近衛が勝利。
最初の頃の黄色い声は消え、会場は近衛と衛兵を称える歓声と拍手で覆われていた
パチパチパチパチ わーわーわー
「皆頑張った!! 次行こう!!」
「はいっ!!」
衛兵は次に備え意気込み頷いた。
次の試合は午後となる為、昼食兼休憩に入り観客達が自由に動き出す
「イソネ、どこ行くの?」
「近衛のサイン会が急遽始まるそうです!!!」
女子達が慌ただしく走って行く
「れいりは行きませんか?」
「あ…貰ったら見せて」
「はい!」 だだだだ
イソネも女子の後を追った
『プリセプスはいらぬのか?』
「うん…まあ凄かったけど」 はい
れいりは買っておいたジュースの一つをソルムへ渡す
「お弁当貰って外で食べよっか」
『御意』
立ち上がると施設内にある公園へ。
公園には無料で何個でも弁当が配布される為、昼を調達する必要はほとんど無い。
れいりは弁当を二個貰うと公園が一望出来る端の椅子へと腰掛けた
「この辺だけ異空間って感じだなー。発明の衛兵がいたりマルーがいたりで」
公園のあちこちに座り昼食を取っているマルー人員や衛兵を物珍し気に眺めている。
近衛は統者周辺で食事、他金持ち組は個室での食事の為公園にはいない
『武器の所持は良かったのか?』
「検査すれば大丈夫だった筈だよ」
既に空となってる弁当を横にし、れいりはゆっくり咀嚼
「気になる武器でもあった?」
『武器…違うな、火薬の臭いがした』
「誰かが持ってるんだろうね」
『そのようだ』
だだだだ
〈お嬢様!〉
〈お昼一緒に食べるですう!〉
〈某もう食べましたと!!〉
公園内を走り回るどしや、まりも、ばあやを見つけると目で追った
ばっ
「?」
衛兵が一斉に立ち上がり、一つの方向を見て敬礼
「偉い人かな?」
〈普通に食べてて下さい〉
〈はい!〉
視線先に現れた二人の人物。
声を掛けられた衛兵は驚いて声が裏返った
『……混ざりだ』
「え!?」
ボソボソ
〈困ったね。どこにでも衛兵いて〉
〈ですねえ〉
「………あれ? どこかで見覚えある様な…」
じーっと見てたれいりは眉を顰め疑問顔
「…んん? 何か…気配ない?」
「おや」
気付いた二人はれいり方面を見る
『ジンホウだ』
「ええ!!?」
誰か分かったソルムに驚いたれいりは誰も見えないソルム側を向く
「…きっと仕事なんだ……」
食べ終えた弁当の蓋を閉めると瞳孔が開いたれいりは思考を張り巡らせた
(ジンホウさんの衛兵姿なんて、これを逃したら永久にお目にかかれない……)
ごくりと生唾を飲む
(……撮りたい)
「撮影機ないいいいいい!」 がく
『……』
落ちこんだれいりは弁当の上に頭突き
「この姿を撮られるのは恥ずかしいですね」
「!!」
「ここいいですか?」
側にいた二人にギョッとなる
「どどどどどどうぞ!~~~と言うか、私と一緒にいて大丈夫なんですか!?」
「そうだよジン、今はてん五師なんだし目立つって」
「てん五師はマルーと交流あるんですよ♪」
「…そうなの」
聞き覚えのある声に焦っていたれいりは真顔に戻る
「…もしかしてコンシルムさん?」
「そうなんです、発明界のヘッドの警護頼まれまして。ま、いざない君達と同じですね」 ばっ
「ジン!」
ジンホウはコンシルムの掛けていたサングラスを奪い確認させた
「そうだったんですか! お久しぶりですコンシルムさん」
「その節はぼくもお世話になって」
ペコペコと双方何度も頭を下げお辞儀
「…コンシルムさんて眼鏡無いと雰囲気変わりますね」
(意外とイケメン?)
「え!?」
コンシルムを改めて見直すとキョトンとなる
「ジン!」 ばっ
「照れ屋さんなんです。コンシルムは」
急いでサングラスを取り返し掛け直す
「…やっぱり目立ってますね」←れ
〈こうですさん?〉
〈衛兵と!?〉
〈てん五師がマルーと?〉
マルーと衛兵は狐につままれたかの様にれいり達に注目
「ほらー、ジン~~~」
言わんこっちゃないとジンホウを戒める
「えー、だってれいり君の近くで食事したいですし」
「え」
「やはりああいった場は肩が凝るんです。癒されたいじゃないですか」
ちゃ
「ね❤」
サングラスを外し、れいりを見ると微笑んだ
(イケメン満開衛兵姿!!!)
れいりの頭に花が咲き満開となる
『プリセプスが時々戻るのは何故だ?』
「格好が変わるとなる様です」 さて、食事を
固まったれいりに不思議そうなソルム。
サングラスを再び装着し、急いで食べるコンシルムに続いて食べ始める
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