マルー・クインクエ【三世界大会】・・・4
二日目、マルー対変化
会場の外では賑やかに軽い花火が打ち上がり、晴天の元競技が始まろうとしていた。
抜き打ちで公開された種目は駅伝四百キロと障害物競走百キロの同時進行。
中央には全体派、風切り派、ひかり派四十人と変化界二十人が集まっている
「変化は人数少ないので変化可だそうです」
「じゃ、マルーは数で勝負なんだ」 四百キロってすごい
「はい」
距離に驚くれいりと頷くイソネ。
審判である近衛の説明が始まる
「マルーは十組一チーム二十名、一人ニ十キロ走る事になります。対する変化も十組ですが、一チーム十名ですので一人四十キロ走ります」
駅伝に参加する人数はマルー二百人、変化百人だ
「道には百キロ分蛍光色が塗られてます、そこを往復して下さい。中継点から走る方々は前もって移動して頂いてます」
「それでは位置について――」
「焦らず自分のペースでだぞ」
「はい!」
「根性見せるとよ!」
「はい!!」
第一走者に激励する一丁とどしや
「よ――い、ゴ―――!!」
マルーと変化二十人が一斉に飛び出した
「さしこさん、ファイト―」
「正直どこまで走れるのか…やってみましょう」
ひかり派『さしこ ともしび』も遅れて走り出す
「ともしびさん、頑張って下さい」
「はい!」
るうりんの応援によりその気の無かったともしびだが、モチベが上がってスピードも上がった
パカラッ パカラッ
びゅん!
「ええ!?」
横を四足歩行の動物と鳥に追い越され、マルー人員びっくり
「長距離を走れる草食系は有利ですね」
「はやっ」
「自分のペースだー!」
既に点の変化走者にれいりは目を丸くする。
一丁は大声を張り上げ皆を落ち着かせようとしていた
「映像でしか見た事ないから実際見ると迫力あるなー」 すっげ
「マルー不利そうです」
今までに無い関心振りのヘッド。常に眠そうな瞼が上がっている
「次に障害物競走に出場する方お越し下さい」
観客席は統者側から見て右から衛兵、金持ち組、マルー、変化と決められ座っている。
間には仕切りがあるも、話し声は普通に聞こえている。
動物になった変化走者を驚きの眼差しで見送る衛兵達の中、一緒に見てたタナマ一・一長が会場入りした選手を見た途端、心の中が浮きだった
(いざない! りょうずさんも!!)
障害物競走に出る選手は、マルー幹部五人(一丁、いざない、まいち、ただお、どしや)と変化界各地域警備隊の上長(ひじお、よつじ、ミオカ、らいた、ショウジョウ)である
「こちらの競技は百キロ内に位置してある課題をクリアしゴールして頂きます」
机を設置し、紙を並べだす
「それぞれ体力ゾーン、感覚ゾーン、芸術ゾーンがあり、出来るまで再挑戦可能ですが一つの課題につき制限時間があります。時間切れの場合失格となります」
ボードを持って来て説明。
体力ゾーンは一問、感覚ゾーンは三問、芸術ゾーンは二問あり、それぞれ到着時に内容が聞かされる仕組みだ
「開始されたらこちらの紙を取り、指示に従いパートナーを探し、共に協力してクリアしていって下さい」
「…何だと」
一筋縄ではいかなそうな競技に一丁達から汗が出始める
「この競技は体力を使います。パートナーを選ぶ際も良くお考えになってから決めて下さい。選ぶ間も制限時間があります」
「同時進行したのは協力者を減らすのが目的でしたか…」
パートナーを探すにも、マルー人員のほとんどは駅伝に出場している為、より選別が難しくなった事にただおも戸惑っている
「変化、マルー、それぞれ五名ずつ。では、位置に付いて下さい」
皆、白線の内側に並ぶ
「よーい、ゴ―――」
だっ
十人はマルー用、変化用に置かれた紙を取ると開く
『う…』←五人
いざない、どしや、ただお、よつじ、ミオカが紙を見たまま固まった
「オレと同じペアの紙はおらんか」
「はい」
“ペアの紙を持ってる人とパートナー”と書かれた紙を掲げると一人が紙を上げた
「まいちか!」
「紙は次の審判に渡すので持ってて下さい」
「皆、先行ってるぞ!」 だっ
「…おす」
早々に決まった二人は最初の課題へ向け走り出す
「行こう!」
「ああっ」
ペア紙を持つひじおとショウジョウも走り出した
「皆動かないけどどうしたんだろ…」
「パートナーを考えてるんですね」
れいりとイソネは動かない選手を見守る
だっ
「あ、動いた」
ただおとらいたが観客席へ
「さよん! 一緒に走ってくれ!!」
変化の人達と一緒に見ていたさよんが立つと場内へ
「分かった❤」 ぴょん
わーわーわー ひゅー
〈さよん、良かったな〉
冷やかしと暖かい声に包まれると、らいたは顔を赤くするがさよんは嬉しそう
「もしかして恋人同士?」 微笑ましいな
「その様です」
れいりとイソネもほっこりして出て行く二人を見送った
「すみません!!」
「どなたか私より背が低くて体力のある方協力して下さい!!」
マルー観客側に来たただおは“自分より背が低い人”と書かれた紙を皆に見せ協力を仰っている
〈百キロは…〉
〈ムリ…〉
〈うーん〉
〈目立つけど百キロかー…〉
サブリーダーや他の女子も百キロと言う壁に阻まれ躊躇う
「いいやん、身長どれくらい?」
「百六十くらいでしょうか…測ってないので」
かろうじて参加出来そうな典型派は身長を聞くが、ただお自身曖昧だ
「行けなくは無いけど途中の課題が危険ー」
「………そちらにも自信がある方ですか…」
困るただお。
会話が聞こえた金持ち組の三人が手を挙げ急いで立ち上がる
ばっ
「お待ちになって! それなら私が…」
ばっ
「いいえ、私が」
ばっ
「ここは私にお任せを…」
「ならいくー? 課題どーかなー?」
「ひらいさん! お願いします!!」
「あい」
ハッとする嬢三人
「百キロ行けますか?」 ほ…
「休みあるなら大丈夫ー」
「助かりました」
ただおとるいこは揃って会場から出て行った。
多分、嬢の声は切羽詰まったただおには聞こえていない
「……」
がっくりと肩を落とし、仕切りの向こうに消えてく三人。
かろうじて聞こえたれいりは三人の様子を無言で見つめる。
イソネも聞こえた様で一緒に見ていた
「あの三人はこの前の令嬢ですか」
「うん…」
「イソネ」
下側から聞こえる声に振り向き驚く
「ミオカさん!?」
ただおがいた場所に今度はミオカがいた
「これはお前しかいない。来れるか?」
困り果てるミオカの紙には“後輩”と書かれている
「で…ですが私は今マルーで…」
「失格よりは良いとよつじが言った」
当のよつじはまだ紙を開いたまま固まっている。
その隣には同じ様に固まったいざないとどしやもいた
「百キロですか…」
「お前なら楽だろう。それともマルーに来て衰えたか」
「いえ……しかし…良いのでしょうか…」
「ええよん」
「行ってきな」
ハギとシブキが笑って頷く。
イソネは許可が出た驚きもあったが、同時に昔の仲間と行動が出来る事に喜びを感じた
「はい! よろしくお願いしますミオカさん」
「こちらもよろしく頼む」
二メートル近くある段差を飛び降りミオカと共に猛ダッシュ
「急ぐぞ!」
「はい!」
「イソネ、がんばー」
れいりは右手を掲げ声援を送る
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