マルー・クインクエ【三世界大会】・・・5
「マルーに行った変化の力を借りるか。パートナーが変化では変化同士の競技と変わり無いだろう」
「それだけ変化の力は素晴らしいと言う事じゃよ♪」 ほーほー
「まぁまぁ。これも障害物競走ならではって事で穏便に行こうじゃないか❤」
呆れた若は眉を寄せ溜息
《おっかねー。発明弱すぎ》
《能力ありすぎです》
頬杖をつくヘッドは顔色がよろしくない
「それにしてもよつじは一体何をしている?」
「ようやっと動き出したか」
若と長が見守る中、よつじは鈍い足取りで外へ行こうとしている
「どこに行く気じゃ?」
出ようとしたがピタリと止まった
「止まったぞ」
「一体何が起きておる?」
躊躇したよつじは開いた紙をじっと見つめる
(やはり行けない。だがこのままでは失格…)
「面白そう。あっちが一緒に行こうかぇ?」
背後から覗く人物に驚いた
「~~~! 御簾中」
「あっちもあてはまるよぇ」
「そうでありますが…」
背後にいた人物はスラリとした背の高い愛嬌のある変化の女性であった
「早くしないと失格なるぇ、ふ小若! よ小若みててぇな」
「いいよ」
観客席の一番前に座るふ小若は、隣で山積みになった弁当の五箱目を開けバクバク食べ続けるよ小若を軽く見て、軽く頷いた
「じゃ、行こか」
「…よろしくお願いします」
陽気にトテトテと走る御簾中の後ろを気を遣いながら付いて行く
「御簾中!?」 ええっ
女性を見た変化の全員がギョッとなり立ち上がる
「相手をツウに決めたのか。紙の内容が気になるのお」 ほーほー
「ツウならずっとおったでないか、何を躊躇しておったあやつは」
再び厳しい顔になり再度溜息が漏れる
「すっごいどよめいてたけど、偉い人なのかなあの女の人」
「若の二番目の奥さん」
「え!?」
「んで、のの子の先輩なんよ」
説明する典型派にれいりびっくり
「つちのさんといざないさん、まだ動かないですね」
「五分切っちゃいましたね。何て書かれてるのだろ…」
れいりの隣に座るるうりんは、未だ固まって動かないどしやといざないを気にかける。
駅伝参加で待機しているマルー人員も二人を心配して眺めていた
(やはりあの方…いや、ダメですと!! それをしたらマルー中でいつまでも言われるとよ!! ですが…あの人は……ダメダメ!! 地獄すぎとよ!!)
どしやは頭の中をフル回転させパートナーを考えるが、一向に決める事が出来ない
(落ち着くと、ここは一度周囲を………!!) はっ
〈どしやさんが動いた!〉
観客席を見回すと、とある人物に目が留まり駆け出した
「お願いしますと、この競技に参加して下さいと」
マルー観客席に来て訴える
「D!!」
「私?」
〈まあ〉
るうりんの左隣にいたディックに頭を下げた
「うん、いいよ❤」 楽しそー
「ありがとうございますとよ!!」
「ディック様いってらっしゃいませ❤」
承諾したディックは段差をひらりとジャンプし場内へ
キャー❤ Dー❤ Dー❤ Dー❤
「ディックさんコールが止まない」
キャー❤ Dー❤ キャーキャー❤
大歓声を浴びながら二人は外へ出て行った。
苦笑し呟くれいりだが、その声も搔き消されてしまう
「…ディック殿の力を借りるか」
「一筋縄ではいかなくなってきたのぉ」
若はパートナーがディックだった事に意外そう
「マルーにイケメンがまだいたとは!! おかちめ~~~」
双眼鏡でディックを追う統者は歯を噛み締め悔しがる
あと二分五十九秒
「残るはいざないだけかー」
いつまでも動かず紙だけを見るいざないに、会場内も不安とざわつきで動揺していた
(やっぱこっちかこっち………足して二で割れば丁度良いのに……上手くいかねぇ…)
頭の中は思考でぐるぐるし、周りの事等どうでも良くなっていた
「副団長!! 二分切りました―――!!」
「副団長――」
はっ
駅伝待機組の団員の声がようやく届き、いざないは我に返る
「くそっ 悩みすぎた! 追い付くにはこっちか!」
急いでマルー観客席へ
「のの子は!?」
「弁当屋に張り付いていないよ」
「何!?」
「ずっとあっちいるね」
ハギとシブキは首をフルフル。
のの子は公園内にある食い放題の弁当屋で思う存分食べまくっている
「連れて来るまで時間がねえっ」
「のの子良かったん?」
「~~~~~~」
弁当屋まで五分程。急いでも間に合わないだろう
「あと四十秒!! 副団長!!!」
焦る団員といざない
「審判!! 相手を担いで走んのはありか!?」
「はい、問題ありません。走者に負担が掛かるだけですので」
「よし!!」
だっ がっ
「レオ! こい!!」
「え?」
ぴょん だだだだだだ
「ええええ!!?」
観客席に飛び乗りれいりを掴むとすぐジャンプ。
肩に担いで駿足で場内から出て行った
〈えええええええええ〉
『?』になるれいりの声が小さくなっていく
〈れいりー、がんばー〉
〈副団長…〉 ほ…
「全員出発しました。準備して下さい」
応援するハギ達と見守るるうりん。団員は胸を撫で下ろす。
近衛は課題場所にいる仲間に連絡をしていた
〈あのスピードを維持出来るのか…〉
信じられないといった表情で衛兵とタナマ一・一長は見ている
「あやつはれいりを選んだか…」
ムッとする若の横で終始楽しそうな長だ
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