マルー・クインクエ【三世界大会】・・・6
「つちのさんはディックさんですか、いざない君はれいり君。楽しみですね❤」
ホテルの部屋の中、各地点を映すモニター画面の前で、心躍らせて喜ぶジンホウがいた
「大画面で見れば良いのに、わざわざ部屋に持って来て」 それ無断で引っ張ったでしょ
「向こうは僕の顔知ってる人も何人かいまして、居づらいんです」
ジンホウの背後にはソファで横になり読書するコンシルムがいる。
ヘッド側は近衛がいる事により警護をする必要が無くなった為、ジンホウ達は休憩を兼ね部屋で寛いでいた
「駅伝はやはり変化がリードしてますか」 ピッ
画面を切り替えると最後尾を走るマルー達がいる
「障害物は第一の課題クリアして進んでますね」 ピッ
課題部屋から出て行く一丁達とひじお達を確認
ボスン! ボスン!
〈さよん!〉
〈大丈夫大丈夫〉
一の課題部屋では低い音と掛け声が外まで聞こえていた
「はい、合格です。中でルールを見てから始めて下さい」
「はい!」
「あい」
到着したただおとるいこが紙を確認する近衛の指示に従い中へ入って行く
「後輩ですか」
「はい。ミオカさんの警備隊にいました」
「合格です。中でルールを見てから始めて下さい」
追ってミオカとイソネ組が課題部屋へ
遅れる事八分
「確認します、あなたは上司ですか?」
「そうぇ。若の妻なんぇ」
「合格です」
「行きましょう御簾中!」
「はいな」
よつじ組も入って行った
「なるほど、ここに来ようとしてた訳か。来れば良いものを」
「儂行きたかったのう」
謎が解け、すっきりした様ですっきりしない若と長
遅れる事十分
「確認します、あなたから見て“美しい人”ですね」
「はいと!!」
「そうなの?」
きょとんとするディック
「合格です」
「行くとよD!!」
「うん❤」
部屋の前にある布を掻き分け入って行く
「正解です❤」 ディックさんは美しい❤
「画面に言っても聞こえないよ…」
ハートを纏うジンホウに突っ込むコンシルム
遅れる事十一分
「確認します」
全力疾走してきたいざないはさすがに呼吸が乱れ肩が上下に揺れていた。地面に降ろされたれいりは座り込み困惑している
「はい、女性で間違いないです。合格です」
紙の内容は“最初から女”とあった
「最初から……?」
中身を見たれいりは眉を顰める
「何か…引っ掛かる…最初から…?」
「細かい事いいから課題行くぞ!!」
納得出来ないれいりの手首を掴み課題部屋へ
[課題一、旋回棒・制限時間三十分]
落ちて来る紙十枚を集めて文を作れ
棒に当たると当たった数だけ紙は落ちて来ない
(一回当たると一分間は落ちて来ない)
棒を避ける係と紙を拾い文を作る係に分かれて挑戦せよ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
紙が落ちる速度は棒の旋回速度と関係あり
・超低速 一分間に一枚
・低速 一分間に二枚
・中速 一分間に三枚
・高速 一分間に四枚
・超高速 一分間に五枚
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
とある。
棒は長さ一メートルで柔らかく、中に機械がセットされており、自在に動き回る事が可能だ
「レオ! 棒はお前だ!!」
「ええ!?」
「俺は拾って文を作る!」
有無を言わさず決められたれいりは、戸惑いながら停止している棒の場所へと歩いて行く
「…痛くないし……いいけど……」
「位置に付いたか」
「……うん」
乗り気じゃないれいりは急に引っ張られ連れて来られた事もあり相当困惑している
「速度は?」
「超高速!!」
ばんっ ピ―――(開始)
「!!」
躊躇う事無く超高速ボタンを押す
「ちょ…」
れいりに向かってくる旋回棒
「ひいっ」
ババババと体を捻らせ避けまくる
「よし!」
最初の五枚が落ちてきた
「ギャ―――」 ババババババババ
『……』←ソ
パニックになりながらも避けていく
「当たらない!!?」 ええっ
れいりの超高速避けに会場びっくり
「悲鳴と動きが全然違う…」
「すご……」
動揺する衛兵。
典型派とるうりんは大喝采
〈こうです…〉
〈何で…〉
サブリーダー達はぽかんとしている
「完成!」
十文字の言葉が出来上がりクリアした。
棒の動きが止まると、れいりは前屈みになり大きく呼吸を繰り返している
「随分巻き上げた、次行くぞ…」
ガシッ
残った余力でいざないの胴体を締め付けた
「レオ…まて…動けね……」
ギリギリギリギリ
「レ…」
余力とは言えない程の剛力で怒り目れいりは締め付ける
「副団長怒らせた…」 無茶振りするから
「怒った顔も何か可愛いなこうですさんて」
「副団長いいな――」
待機組の団員が二人の様子を画面で見ている。
やっとれいりが手を離すと肩に担いで走り出した
「こうですさんまだ怒ってる…」
れいりの怒り目が続行中だった事に団員は苦笑。
ジンホウは頭を下げ大笑い
「あ、いざない! れいりだ!」
「もうクリアしましたとか」
「…ああ」
布を開け出てきたどしやとディック。
いざないが先を走る事になり二人が最後尾になった。
暫く走ると前を行く人影が見えてきた
「追い付いて来たと!」
よつじは後方の気配に気付く
「御簾中、一気に次まで行きますので手前の背に…」
「大丈夫ぇ、あっちなるぇ」 フオオォ
体を回転すると白く美しい羽を流れる様に広げるツルへと変化した。
グリズリーとツルは加速し、いざない達から遠のいていく
「差が開いたと!!」
「かっけぇー」 きれーな鳥じゃん
どしやは焦るが、いざないは優雅に飛ぶ鳥に惚れ惚れしている。
動物二匹は速度を上げたまま、前の走者を抜かす
「御簾中!!?」
ギョッとなるミオカとイソネ。
二匹はまた前の走者を素早く抜いた
「御簾中だー」
「え?」 早いっ
いつの間にか過ぎ去った二匹にただおは何が起きたか分かっていない。
二の課題へ到着後、らいたとさよんは布を開け中へ入ろうとした
「御簾中!!」 ばっ
「構えなくてええよぇ」
つい避けて部屋入りを譲るらいたとさよん。
人に戻ったよつじとツウはそのまま部屋へと入って行った
「一挙に三位まで来ましたね」
「変化の方は譲るのですか」
(分かる…)←衛兵
理解できない金持ち群に対し、上に逆らえない衛兵全てが俯くと脂汗が滲んでいる
「偉い方ですか?」
「若の奥さんー」
「なるほど」
マイペースでやって来たただお達。
近衛が見守る中布を開け課題部屋へ
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